ニッケイ新聞 2008年12月30日付け
781人の移民を乗せた笠戸丸がサントス港14番埠頭に投錨してから100年。短くもあり長くもあったこの1世紀を振り返り、日系人社会の将来を描く移民祭は無事に幕を下ろした。アニエンビーの式典には、皇太子さまが臨席し、1世移民が「百周年音頭」を踊り、孫や曾孫たち1200人が勇壮に和太鼓を叩き、力強さと移民の心を訴えたのは素晴らしいの一語に尽きる▼日本政府の美術工芸展覧会の感動は後世に語り継がれるだろうし、この移民らの祭りが記念すべきものとなったのは喜ばしい。あの感激の日からもう半年が過ぎ、平成20年の師走も今日と大晦日を残すのみとなったのは、いささか寂しい想いもするけれども、ここは元気に新しい年を迎えたい▼人気歌手らが勢揃いする「紅白歌合戦」は今や年中行事に近く、今年のトリは氷川きよしさんとベテランの和田アキ子さんのニュースにコロニアのフアンも沸きに沸いている。ここサンパウロではサン・シルベストレ人気が高く、カトリック教会では「納めのミサ」があるし、レーヴェイロンで山海の珍味に舌を鳴らしながらシャンパンを手に轟音を上げる花火の美しさを楽しむ▼百八の煩悩を消滅させるという「除夜の鐘」は大晦日の12時に始まる。鐘楼から流れる梵鐘の響きはしみじみとした感慨を与えるもので懐かしい。ここでも日伯寺や西本願寺では撞くようだし、熱心な信徒は境内に集まるのではあるまいか。東京では「年越し蕎麦」を食べてから元朝参りがあるし、なにかと忙しい。丑の年も近い。日本移民200周年に向け凛々しく第1歩を踏み出したい。 (遯)