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マンション分譲、プロジェクト購入に黄信号=予想外の金融危機=住宅ローン審査厳格化で=大サンパウロ市圏で6万人に影響

ニッケイ新聞 2009年1月6日付け

 プロジェクトの段階で頭金だけを払って購入契約をしたマンションが、物件引渡しに必要な住宅ローンを組めず多くの購入者が窮地にあると五日付けエスタード紙が報じた。金融危機など予想もしていなかった二年前と比べて、格段に住宅ローンの審査規準が厳しくなったため、購入者と建設会社が立ち往生をしている。
 工事開始前のプロジェクト段階での販売は、銀行融資を受けなくても貯金で頭金を支払える容易な条件となっている。だから物件受け取りの時は、鍵代としてまとまった住宅ローンを組む必要がある。
 物件受け取り時のローン条件の厳格化が購入者と建築業者にとって頭痛の種となっている。物件引渡しで建築会社は、銀行負債を購入者に肩代わりする。これができないと、建築会社は倒産するリスクが生じる。購入者も期限内に、鍵代を決済するよう催促される。
 マンション購入者にとっては、想像もしなかった金融危機で降って湧いたような災難。この不都合な現象は、中央銀行の新しい課題だ。中銀は十一月、一億五千二百万レアルの不動産ローンを供与したが、前月比で二六・五%減だ。
 金融危機が表面化する前、ブラジルの不動産業界は未曾有の好況に明け暮れた。建設会社は、誰にも買えそうな無数の分譲マンションを発表した。大サンパウロ市圏だけで、前年比七八%増の六万二千軒を売り上げた。
 好況時は契約書にサインをしてから、支払可能な範囲で融資条件を選ぶことができた。それが金融危機で事情が一変。
 窮地に陥って苦しんでいるのは、多くが中流の上クラスのようだ。このクラスは、民間銀行にローンを求めた。公立銀行やポウパンサ(貯蓄金融)ローンの門を叩くのは、中流の下クラス。
 政府の金融対策が、中流の下クラスを対象としているのにも一因がありそうだ。流通枯渇に対し政府は専らカイシャ・エコノミカ(連邦貯蓄銀行)や公立銀行に公的資金を投じている。
 ローンで不動産を購入後、失職した場合の相互扶助基金の設置についても検討中。しかし、高額所得者については、政府の支援対象外とされる可能性がある。