ニッケイ新聞 2009年1月8日付け
ブラジル地理統計院(IBGE)は六日、十一月の工業生産が前月比五・二%も落ち込み、一九九五年以来最大の後退で、米金融危機の影響が実体経済に浸透しつつあると発表したことを七日付けエスタード紙が報じた。昨年同期比で見ると工業界全般で六・二%後退し、最も深刻なのが耐久消費財と中間財の分野としている。世界的不況が表面化したことで、政策当事者の対処が今後、批判されそうだ。
生産後退が最も顕著なのは、自動車の前月比二二・六%減で、ここ十七年間で最大とされる。不況の波は、広範囲に波及しつつある。世界不況は予測されたことだが、国内の産業界と消費者がいかに対処するかが今後の課題といえそうだ。
産業の落ち込みは十、十一月、短期間に急速な傾向として定着した。過去では〇二年十月と〇三年六月に、このようなことを経験している。
産業界は〇七年から、運転資金の調達に苦慮していた。それが十一月で景気の後退となって表面化した。先頭を切ったのは、耐久消費財の前月比二〇・四%減。前年同期比二二・一%減だ。
耐久消費財は、回転資金不足の影響を最も受ける業種だ。自動車の生産は、昨年同期比で三四・二%減。自動車は部品や鉄鋼など裾野の広い業界で、産業の象徴だ。
中間財は部品や素材などの材料や食糧、鉄鋼、繊維などで、産業の骨格をなす分野だ。それが前月比三・九%減、前年同期比七・五%減。これは輸出の落ち込みが、響いたからとされる。
産業の後退で〇八年第4四半期のGDP(国内総生産)が、前期比でどの位落ち込むか懸念されている。GDPの落ち込みは、中央銀行の通貨委員会で議題になるはず。中銀は「角を採るか牛を採るか」を決める。
アナリストの見方では、工業生産の後退を四%減位と見ていた。五・二%減は、ショックという。これは経済政策や通貨政策が効を奏していないことを意味すると無策振りを訴えた。
不況の表面化は、否定的相乗効果をもたらす。諸物価が値上がりすると、消費者は買わない。市場はさらに冷え込む。中銀は不況の兆候があった、第3四半期の時点で対応すべきであった。アナリストは政策金利が近日、一一・二五%に下がると見ている。