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投稿=広島の小林正典さん=映画「ブラジルから来たおじいちゃん」を見て=来月来伯、出会い期待

ニッケイ新聞 2009年1月15日付け

 広島修道大学で移民史に関する講義などを行い、勝ち負け問題に関する著書もある小林正典さん(64、広島市在住)が来月中旬に来伯するにあたり、本紙に投稿した。一九九五年訪問時に知己を得た人との再会、新しい出会いを期待しているという。ブラジル移民の紺野堅一さんが日本のデカセギ家族を訪ねるドキュメンタリー映画『ブラジルから来たおじいちゃん』(栗原奈名子監督)の感想とあわせて掲載する。
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 私は、広島市生まれ、被爆一世で広島市在住の、ニッケイ新聞の長年の購読者です。日系社会情報とニッケイ歌壇、俳壇、川柳など楽しみにさせていただいています。
 今回初めての投稿をしてみます。先日、「ブラジルから来たおじいちゃん」と言う映画を見ました。この映画を見て話をしてもらえませんかと言う依頼が、広島市内の地区公民館からあり、それに応えてのものでした。
 ところがそこで表現されていたのは、日本の問題であり、人間の生き方そのものをみつめるものでした。特に、日本での移民受け入れに、いろいろ問題がありすぎることがよく分かるものでした。
 そこで私は、日系移民史やブラジルと日本の交流史などを話すことになりました。実は、一九八四年からブラジル始めハワイや南米の移住者の方々とつながりができて、それぞれ何度か訪問し、移民の方々と交流するうちに日系移民史にも詳しくなり、九六年から広島修道大学で日系移民史の講義を担当しています。私が学生達に対して強調していることが二つあります。
 一つは、「移民史は過去のことではない。現在は企業や団体の海外での活動を通じ、その職員が移住することになり、そのまま現代人の生き方につながっている」こと。 もう一つは、「海外移住は失敗者が多いのでは」とか「成功者がいるのですか」との問いに対して、「あなたの家は成功者ですか失敗者ですか」「日本は成功者の集まりの国ですか」と問い返し、その上で「『生き続けること』が最大の勝者である、と。
 「子々孫々と生き続けて来たあなたの家族もブラジルの日系人も、ペルーの日系人も、どこに住もうとも、綿々と生き続けてきたことがそのまま成功者であり、勝利者である。だから、君たちも自分の目的を持って行き続けてほしい」と話しています。
 映画の中でも、主人公の紺野堅一さんが「人生は地域に貢献し生き甲斐のある生活を送ること」「人間の幸せは何事にも満足すること」というのは、そのまま『生き続けること』の意味を示す良い発言でした。
 こうしたブラジル移民の方々に、お会いする旅を、来月中旬から五十日くらい行います。九五年に三十日くらい滞在しましたが、久しぶりの長期滞在になります。次の出版につなげる良い出会いがあればと思っています。