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自転車愛好家が事故死=パウリスタでバスと接触=現場に4時間余りも放置

ニッケイ新聞 2009年1月16日付け

 ハンドルが曲がった自転車と仕事用のカバン。四時間も現場に放置された遺体と共に、サンパウロ市の交通戦争の一端を物語る品だが、十五日付伯字紙によると、サンパウロ市パウリスタ大通りでバスと接触した自転車の女性が死亡したのは十四日昼前。
 イピランガの自宅から患者宅までは、いつも自転車だったマッサージ師のマルシア・レジーナ・デ・アンドラーデ・プラドさん。十一日も海岸までのツーリングに参加など、自転車をこよなく愛す彼女は、追い超し後に右側に戻ろうとしたバスに接触されて転倒し、後輪でひかれて即死した。
 車やバス、バイク、自転車に歩行者も加わった交通戦争は不可避だが、〇七年のサンパウロ市の交通事故犠牲者は、死者四・三人/日、負傷者七二人/日とは〇八年九月十八日エスタード紙の報道。
 このような交通事情と大気汚染の改善のためには積極的に自転車をと考え、サイクリングやネットを通じての啓蒙活動にも参加していたマルシアさん。十一日にも、車の代替物としての自転車ではなく、自転車の代替物としての車と考えられる時代になればとの意見を掲載していたという。
 マルシアさん自身、〇八年末に「サンパウロ市はあらゆる面で車中心の町」と述べたという様に、サンパウロ市の自転車専用レーンは計画止まりのものが多く、完成レーンは二九・五キロのみ。地下鉄や都電(CPTM)への自転車持ち込み認可や駐輪場設置が始まったとはいえ、専用レーンの六四・四%(一九キロ)は走行を妨げる物が少ない公園内敷設など、現実の行政の目は自転車には向いていない。
 一日の死者四・三人の内、歩行者二人、バイク利用者一・三人、自転車利用者〇・二人という数字は弱者ほど犠牲になることを表すが、交通事情や大気汚染の実態を考える時、積極的な交通手段代替物と考えられる自転車の無防備さを立証した今回の事故。遺体引取りまで四時間という数字は事故などの犠牲者が多いことの証拠でもあるが、マルシアさんの遺体は生前からの希望通り医学大学に献体されたという。
 交通事故の犠牲となった一市民の声が行政の場にも反映され、自転車が安全な交通手段となる日が待ち望まれている。

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