ニッケイ新聞 2009年1月16日付け
ブラジル政府がイタリア政府から身柄引渡しを要請されていたケーザル・バチスチ容疑者に対し、ジェンロ法相が政治犯として亡命を容認したことで十四日、両国政府の間できしみを生じたと十五日付けエスタード紙が伝えた。
伊外務省は十四日、同国の刑事事件にブラジル政府が介在したとして、七月にサルデーニャ州マッダレーナ島で開催のG8サミットの議題にすると、脅迫ともとれる公式声明を発表した。
プラナウト宮は亡命容認が、法相の権限内のことであるとした。法相はルーラ大統領に事情を説明し、了解を得た。法相によれば、同容疑者が殺人事件への関与を否定し、裁判も受けずに服役したため本人の弁護権を認めたと弁明した。
バチスチ容疑者は一九七〇年、共産党武装運動(PAC)のメンバーとして赤軍の支援のもとに活動。一九八〇年はフランスに潜伏、ミッテラン左翼政権にかくまわれた。仏政権がシラク大統領に代わり、同容疑者は二〇〇四年渡伯。リオで二〇〇七年に拘束後、最高裁へ亡命を申請した。
政治犯として亡命が容認されたため十六日、釈放の予定。伊外務省はローマ駐在のアデマール・バハジアン伯大使を召喚し、伯法相と伯議会に対し同容疑者の射撃戦で犠牲となった遺族から遺憾の意を伝えた。
伯内務省のマントヴァノ次官は「伊政府は個人の問題と国家の問題を混同」と非難した。しかし、法相判断も政府内で物議をかもした。テロか政治犯かの判断で、国際機関に逆らったようだ。
ルーラ大統領が昨年十一月にローマを訪れたときも、伊政府は同容疑者の身柄引渡しを要請。伊政府はこれから、国際問題の重要な仲介役を自認するブラジル外交に、まとわりつきそうだ。
伊政府は今年、G8の議長国となったことで、国際テロ対策で活動を活発化させることが予想される。伊政府の公式声明は、伯外務省で朗読された。声明の背後に、ルーラ大統領を次回G8の招待客から外す報復の意向が伺える。