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ルーラ大統領=亡命容認は国家主権の行為=外交に快刀乱麻を=政府判断に軽率の声も=ブラジルはならず者天国か

ニッケイ新聞 2009年1月17日付け

 ルーラ大統領は十五日、ブラジルに政治亡命を求めたイタリア左翼運動の元メンバー、ケーザル・バチスチ容疑者に対する政治犯か刑事犯かの判断は、国家主権の問題だと述べたことを十六日付けエスタード紙が報じた。同容疑者の身柄引渡しを要請し、拒否されたことでイタリア政府は不快であろうが、現実を呑まざるを得ないであろうと大統領は確答した。アモリン外相は、法相決定であれば容認せざるを得ないという。
 ルーラ大統領は、同件に関する法相判断を全面的に支持する意向を表明した。同容疑者は一九七〇年、イタリアで射撃戦から四人を殺害したことで起訴され、終身刑の判決を受けていた。
 同容疑者を政治亡命者として容認したことで、伯伊間の外交問題に発展した。大統領は伊政府の好むと好まざるとに関わらず、決定は国家判断であるという。各国には国家判断があり、他国は尊重する義務がある。
 これで国際関係も、すっきりするという大統領の見方だ。これが、G8にもG9、G10にも影響を及ぼすことはないと明言した。
 アウファノ伊法相は、ブラジル最高裁へ決定撤回の申請を行うか検討すると述べた。伊政府は、可能な範囲で手を尽くす。世界の民主化に貢献するブラジルに、G8で政治姿勢を問う考えだ。他国の法的権威を侵害するなら、ブラジルを信用しないと警告した。
 ルーラ大統領によれば「ブラジルは寛大な国」だ。同容疑者の起訴は、古い犯罪の立件で事実を立証する証拠物件は存在しない。同容疑者は事件当時、政治運動に奔走した。現在は執筆業に専心する別人。ジェンロ法相は、同容疑者がブラジルで執筆を続けるよう配慮したのだという。
 問題は政府内よりも、外部が騒々しい。政府内では官房長官や総務長官、通信相、人権相、ガルシア特別顧問などが政治犯容認に賛成票を投じた。アモリン外相は、不快感を露わにした。
 外相によれば、政府内に儀式の作法があるそうだ。外相は作法に従うが、意見は一切述べない。ブラジルの法律が、統轄責任者の法相に判断を下させた。セーラサンパウロ州知事も、政治亡命容認は誤解を招く下手な判断だと見解を述べた。
 軍人クラブ会長のフィゲイレード将軍は、軍の立場から政府判断に奇異感を抱くという。政治犯かテロリストか定かでない者をかくまうのに疑問を呈した。これでブラジルは、ならず者の楽園という風評ができる。