ニッケイ新聞 2009年1月22日付け
イタリア政府は二十日、バチスチ容疑者の身柄引渡しで、ミケレ・ヴァレンシス駐伯イタリア大使が最高裁を通じブラジル政府へ圧力を強めてきたと二十一日付けエスタード紙が報じた。同容疑者は本国で終身刑を言い渡されており、ブラジルの最高裁が釈放を決定する前に伊政府の要請に応じるよう再度要求した。ジェンロ法相の亡命容認は、伊国での司法裁決を無効にしたというのだ。
駐伯伊大使は、伊政府の法律顧問でブラジルの司法制度に通じるナボル・ブリョンエス氏を伴って最高裁にメンデス長官を訪ね、同容疑者の政治亡命見直しを要請した。
最高裁長官は先週、検事総長に政治亡命の条件を規定する見解書を求めた。同容疑者の身柄引渡しを容認している検事総長の見解書提出は、予定期日はない。
これまでの状況から、伊政府が同容疑者の審理を継続する最高裁の保証を取り付けるのは、困難と見られる。最高裁は過去数年、政治犯について亡命法の適用判断をしたことはある。
法相が亡命適用を容認したことで身柄引渡しは困難になったと、最高裁は態度を保留している。法相判断の背景には、Farc(コロンビア解放前線)の活動に関与したオリヴェリオ・メジナ神父の亡命容認があった。
しかし、メジナ神父の亡命容認はConare(亡命審議会)で受理され、バチスチ容疑者は法相判断という相違がある。伊政府は、その隙間を狙ったらしい。
メジナ神父の場合、最高裁も亡命容認に同意した経緯がある。バチスチ容疑者の場合はConare決定に反し、法相と大統領により国家主権の見地で判断をした。
Conare判断と法相判断について最高裁でも、見解が異なるようだ。司法判断と司法権限は違うらしい。最高裁は二月、Conareのメンバーである閣僚十一人が休暇から帰り次第、審理を行うとした。
法相は大統領とアモリン外相を交え、法相判断と外交関係への影響を協議。三人が同件で集まるのは初めて。大統領は近日、伊大統領へ公式文書を送り、決着をつける考えのようだ。