ニッケイ新聞 2009年1月24日付け
経済・文化活動も活発で、雇用も含めた様々なチャンスに恵まれた町とされるサンパウロ市で、〇八年十一月に行われた意識調査によると、サンパウロ市は良いという人が五〇%。普通二三%、最良二〇%、最悪四%、悪い三%との世論調査・統計機関(Ibope)調査結果を二十三日付アゴーラ紙が掲載。
五一%がサンパウロ市民であることを誇りに思っているというが、フォーリャ紙は、〇八年一月の調査では五五%だったサンパウロ市以外の町への転居希望者が、十一月の調査で四六%に減少したことに注目。市長選候補者達が訴えた公約を聞き、町が良くなると期待する人が増えた結果と推測している。
一方、同日付エスタード紙は、市民の三人に一人は地域社会の一員という意識が薄いとし、どこに行けば何があり、どこが安く買えるかといった情報も知らない人は郊外ほど多いという。
一つの調査から見えるサンパウロ市の様々な顔だが、気掛かりなのは、チャンスや労働市場の大きさ、町の活力などがサンパウロ市の魅力とする人々がいる一方、暴行、暴力が恐いが七八%、強盗や盗みが恐い五七%、麻薬犯罪が恐い三七%などの数字。
車に轢かれるのが恐いが七%や、洪水とサッカーの応援が各六%という数字もサンパウロ市の実態を窺わせるが、この〃恐い〃という思いが、頭の中だけではなく、体験に裏打ちされていることを示す記事も掲載されている。
エスタード紙記載のサンパウロ連邦大学の調査結果だが、一五~七五歳の二七〇〇人中八〇%が暴行、暴力に巻き込まれたり後遺症に悩んだ経験があり、内一五%は精神的変調もきたしている。
脳の一部(前頭前野と海馬と呼ばれる部分)に事件や事故のショックが残り、不眠症や集中力欠如などの症状を引起す、いわゆるトラウマだが、調査対象者の多くはトラウマに陥っている自覚がなく、治療開始も遅れる傾向があるともいう。
殺人減少中とはいえ、交通事故や強盗事件の直接、間接の被害者は数知れず、心のケアを必要とする人が多い事を示す記事。放置期間が長く孤立するほど、また幼少時ほど、トラウマに陥り易く治療も長引く。治安改善と共に、身心のケア体制や人材養成も必要だ。