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バチスチ亡命容認=伊政府が駐伯伊大使召還=大統領、演出と一蹴=外務省へ指示「口車に乗るな」=書簡「国家主権判断」は不動

ニッケイ新聞 2009年1月29日付け

 イタリア政府は二十七日、ミケレ・ヴァレンシス駐伯伊大使を本国へ召還したことを二十八日付けエスタード紙が報じた。伊政府の行為は、バチスチ容疑者に対しブラジル政府が亡命容認を決めたことへの抗議と見られる。検事総長が最高裁に対し同容疑者の身柄引渡し提訴を保留することを要請した直後、同措置が採られた。伊政府のマンチッカ外務次官は、十日の伯伊親善サッカー試合を中止と発表。ルーラ大統領は、伊政府の対応を子供のようだと一蹴した。
 イタリア政府は、ブラジルの政治犯取り扱いに不満の意を表し、大使召還で伯伊外交を険悪化させた。両国間では、ブラジルで金融犯罪を犯し、イタリアへ逃亡したカチオラ容疑者の身柄引渡しも未解決となっている。
 同外務次官はイタリアがG8の議長国を務めることで、ブラジルとG8の間に何らかの障害を置くことを示唆した。伊政府の態度硬化は、検事総長による最高裁への意見書提出の直後だ。
 検事総長は当初、バチスチ容疑者の身柄引渡しを最高裁へ要請していた。しかし、ジェンロ法相が同容疑者の亡命を容認したことで、身柄引渡しが無意味だと判断し、提訴保留を要請した。
 法相は同容疑者を、政治的弾圧の犠牲者で裁判では弁護の機会も十分与えられなかったと判断をした。検事総長も法相判断に従った。しかし、伊政府は検事総長の提訴保留に抗議、ベルルスコニ首相の了解を得て大使召還の措置を執った。
 イタリアでは伊政府要人ばかりでなく、ローマ市のヴェルトローニ前市長や野党の民主党も抗議声明を発表した。
 大使召還は断交へ向けた外交手続きの一環とされ、譲歩の意志がないことを意味する。外交関係は保持するものの、双方の声明が徐々に語調を強め、最悪は在外公館の閉鎖と断交に至る。
 大使が事情説明に帰国するときは、外交関係の黄信号を意味する。バハジアン駐伊伯大使が伊外務省へ呼ばれ、法相判断の説明を求められたのも、それに相当する。
 ルーラ大統領は、伊政府の対応を誇大妄想と一蹴した。外務省関係者に、伊政府の口車に乗せられないよう警告。大統領の「国家主権」書簡は、決定版であって説明の余地がないという。
 バチスチ容疑者のヴァルガス弁護士は同容疑者の裁判が七〇年代、一方的に捏造されたえん罪審理であったと訴えた。