ニッケイ新聞 2009年1月29日付け
「レナン、良かったよ! 日本人よりうまいぐらい」。十一日に行われた藤間流日本舞踊学校の踊り初めの後、楽屋まできた一世のファンたちが日本語で激励の声をかける。言葉数の少ない非日系のレナン・フェルナンデスさん(24)は、微笑みで応える。
普通科のトリをつとめ、見事に長唄「七福神」を舞った。一つ一つ所作が丁寧で的確、表現力がある。見に来ていた丹下せつ子さんも「あと何年かしたら良い踊り手になるよ」とその可能性に太鼓判を捺す。
まだ始めて五年。毎週一回一時間半の練習でメキメキ頭角をあらわしている。「漫画やアニメには興味がない。その代わり、お寺が大好き。特に東大寺が一番美しいと思う」というから、最近のアニメブームとは一線を画した硬派だ。
藤間芳之丞会主によれば、来年創立五十周年を迎える同学校の生徒は現在二百人だが、うち二割にあたる四十人は非日系人だという。名取りも三十数人輩出したが、うち一人は非日系の藤間芳冠(よしかん)さんだ。
「ここ二十年ぐらいでガイジンさんが増えたね。日本ブームで演劇関係者とか入ったけど、入っては辞め、入っては辞め、熱しやすくて冷めやすい」と分析する。「でもみなさん、インターネットで調べて納得してから稽古を始めるから、よく知ってるよ」と感心する。
レナンさんは天理教の日本語学校で十歳から勉強を始め、わずか十三歳で単身訪日した経験がある。その時、奈良、大阪、東京を見物して「人生が変わった」という。現在は大学二年で、経営学を専攻する。
将来の目標を問うと、迷うことなく「名取りになりたい」と答えた。