ニッケイ新聞 2009年1月30日付け
サンパウロ州内陸部ポチンの監獄からの脱走犯が、警官二人を殺害した上、妊婦を人質に篭城後、取り押さえられた、と二十九日付伯字紙が報じた。
ことの起こりは、二十二日朝、サンジョセ・ドス・カンポス市(以下SC市)内のエンジニアのトヨタ車盗難事件だった。この盗難車が再び姿を現したのが、二十七日一九時半頃。SC市から一三八キロ離れた、ジュンジアイ市のバンデイランテス道での事故車両四台の内の一台がその車だった。
この事故で現場に駆けつけた道路警察官(30)は、ウイリアン・フェレイダ・ダ・シウヴァ(29)容疑者を尋問しようとして拳銃を奪われ、至近距離から被弾。顔や首などに弾を浴びた警官は、病院に運ばれたが助からなかった。
その後、容疑者は道路警察のパトカーで逃走するが、ヘリコプターが追跡したため、七キロ先でパトカーを乗り捨て、通りがかった車に無理やり同乗。サンパウロ市到着後、バスに乗り、二十八日八時頃SC市に着いたという。
同市到着後の容疑者は、車で出かけようとした女性弁護士を脅して人質にし、弁護士と共に市中央部のユニバーサル教会に侵入。この教会内で、様子を怪しんで尋問した平服軍警(42)は、「警官か」と尋ね返す容疑者に肯き返した途端に至近距離から撃たれ、ほとんど即死した。
軍警射撃後、軍警の銃も奪って教会を逃げ出した容疑者は、間もなく、就寝中の妊婦宅に押し入り、銃を突きつけ篭城。駆けつけた警察や報道関係者との交渉に応じる気配のないまま二時間半が経過したが、大麻吸引で高ぶった状態のまま、何日か不眠だったという容疑者が居眠りを始めた隙に妊婦が脱出。半時間後に屋内に踏み込んだ警官に逮捕された容疑者は、銃押収後、ジャカレイ市の刑務所に連行された。
容疑者はSC市内での強盗殺人罪で七年の刑が確定し服役中に脱走。今回の犯行については反省の色はなく、冷酷で計算高い危険人物だという。
一方、妻と二歳の息子を残して死亡した道路警察官は二十九日にバレットス市営墓地に埋葬されたが、同僚の道路警察官らは一人でのパトロールへの不安も訴え始めている。