ニッケイ新聞 2009年1月30日付け
ルーラ大統領は二十八日、産業開発省と財務省が打ち出した輸入許可制を中止するよう命令と二十九日付けエスタード紙が報じた。同制度は政府内でも、G20で約束した保護排除に抵触するとする批判があった。
「同制度が政府の意向に反する誤りであり、輸入許可制はドーハ・ラウンドの趣旨に反し、不況脱出の解決策にもならない」と、大統領がその失策を認めた。
輸出の激減と貿易赤字で事態の急変を憂慮した関係当局が二十六日急遽、許可制を導入、財務相が指示した統計管理システムを誤解した短慮で軽率な制度であったことを財務相も認めた。
工業用の加工原料や副原料は、従来通り通関される。許可を要するのは薬品など一部の特殊製品に限るという。しかし、税関システムが縦割りで、横の連絡がないのも欠陥といえそうだ。
ジョルジェ産業開発相は訪問先のアルジェリアから、当面は財務省指示に従い、帰国後に財務省と折衝を行うと連絡してきた。開発相留守中の出来事だが、大統領は仕事手順の誤りとして責任追及をしないと約した。
WTO提訴も辞さないとしていたEU(欧州連合)は、ルーラ大統領の許可制取り消しに勇断の賛辞を送った。G20のリーダーの一つとされるブラジルが、保護制度導入と誤解されることを始めたので関係国は驚いていた。
世界不況克服のためブラジルとEUは、先進諸国に固着する保護制度を排除するG20のリーダーを自認。先進国の経済力を背景にした農産物補助金は、二〇一三年全面停止だが、改善の様子がないことをブラジルはいぶかっていた。
メルコスル本部があるウルグアイは、ブラジルの輸入許可制中止で安堵の胸を撫でおろした。しかし、保護貿易が定着しているアルゼンチンは、ブラジル製品に対し報復的に輸入制限を始めた。