ニッケイ新聞 2009年1月31日付け
中国の食品汚染は酷い。子どもたちに飲ませるミルクにタンパク質が多く含まれているようにと有毒性のある薬品を投入し多くの人命を奪い、犯人らには死刑の判決があったが、事はこれだけではない。日本には「毒入り餃子」が輸入され各地で被害があり、外交問題にまでなる大騒ぎだし、ペットの飼料にも毒が含まれアメリカでは多数の犬が死に「ノー・チャイナ」の運動も起こった▼と、ここ数年は中国叩きが盛んだけれども、我が日本も産地偽装が後を絶たない。「国産うなぎ」と明記しているのに台湾や中国での養殖物を包装しての販売が次ぎから次に起こる。ネギやほうれん草などの野菜もだし、魚の干物までが外国産なのに四国などで天日干と偽って売りまくる。こんな悪徳商人は非難されても致し方ないのだが、残念ながら一般消費者の素人にとって「商品の真贋」を見極めるのは極めて難しい▼それもこれも、美味を求めてのグルメ時代になってからの話であり、あの薩摩芋の茎で抱腹の喜びを覚えた終戦後の飢餓状況のときには、考えられない珍事なのである。今,東京には世界の味が蝟集している。田紳までもがネクタイを締め威風堂々と珍味佳肴を追い求め赤坂だ、やれ麻布ーやはり銀座の名店に限ると大手を振る▼偽物氾濫の背景には、こんな漫画もどきのエセ社会が蔓延っているのではないか。ブランドや華麗な包み紙に驚き惑わされての美味求真は奇妙だし真に以って情けない。27日付け小欄の12行目にある「帳」は張富士夫の誤記につき訂正しお詫び致します。(遯)