ニッケイ新聞 2009年2月5日付け
ブラジル地理統計院(IBGE)は三日、〇八年十二月の工業生産が過去十七年で最低の前月比一二・四%減、前年同月比一四・五%減となり予想を下回ったと発表したことを四日付けエスタード紙が報じた。生産が短期間に激減する経験は、ブラジルでは初めて。しかし、急激な工業生産の落ち込みは、回復も早いことを意味する。自動車などの耐久消費財の販売には、すでに回復の兆しが表れているとミング経済研究所は分析している。
〇八年九月までの工業生産は前年度比六・四%増を保っていたが、第4四半期における一九・八%になる予想外の落ち込みで、年三・一%となり前年の半分になった。
十二月の工業生産縮小は、在庫調整期で世界的な傾向だから驚くことではない。過剰在庫を一月に処分するから、一月は再縮小がある。
ミング経済研究所は、工業生産の激減を次のように分析した。原因は色々あり、状況が重なって同時発生したので、同時治療の必要がある。
経済悪化の原因の第一は、昨年九月のリーマン破綻により国際金融が突然、流通をせき止めたこと。そのためブラジル企業は国外で資金調達ができず、国内の金融市場へ押し寄せた。殆どは資金調達で挫折した。
ペトロブラスまでが、連邦カイシャや伯銀へ金を借りに行った。そのため数万の中小企業が、資金不足で窒息を余儀なくされたに違いない。
第二は、十月に大手六社と中小企業数百社が、為替派生商品に手を出し、何十億ドルを失ったこと。企業多数は為替で大損、輸出激減の三重苦で未曾有の苦しみを味わい血の小便を流した。
ブラジルの自動車産業が解雇だ操短だと騒ぎ出した原因は、中古車ローンの大手ヴォトランチン銀行とサフラ銀行が、為替で失敗したためだ。両行がローンを突然中止して中古車の下取りが滞ったため、新車の販売にまで悪影響が広がり、自動車工業全体を狂わせた。
十二月から自動車などの耐久消費財の販売は回復基調に入っており、同研究所によれば、経済指数に回復の兆しが表れ始めている。融資は前年の三〇%増も出ている。貧乏人まで自動車を買えるようになったのだ。
第三は、いつ自分の首が飛ぶか分からない将来への不安。工業生産落ち込みの原因は、国民がその気になれば、すぐに解決できるものばかり。同研究所は「回復は早い」と推測している。