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「尊徳思想をブラジルに広めよう」=神奈川セミナー=危機の今こそ金次郎に学べ=玄孫も来伯「感無量の思い」

ニッケイ新聞 2009年2月10日付け

 「金融危機の今こそ、二宮金次郎の思想を思いださねばなりません」。神奈川文化援護協会(村田博会長)や文協・援協・県連などが組織した二宮金次郎(尊徳)像ブラジル受け入れプロジェクト実行委員会(高村純委員長)が実施したセミナー「二十一世紀を生き抜くために・二宮尊徳から学ぶ」が七日午後、文協小講堂で行われ、来伯した報徳博物館の草山昭館長の、そのような言葉に来場者約百人は耳を傾けた。当日は玄孫の二宮精三氏も来伯し、二宮哲学の世界普及への願いを語った。

 四十三年間、尊徳思想を研究している草山館長は、ニッケイ新聞などの取材に応え、移民史料館を見た感想として「移民のみなさんは子弟教育に尽力されたと聞き、まさにその実践者だと感銘を受けた」とのべた。
 さらに、現代におけるその意義を「世界で経済と道徳の一元論を説いたのは、二宮尊徳だけ。現在は金融資本中心になり、マネーゲームで儲けることが美徳となり、金融危機が起きた。尊徳はコツコツと勤勉に働くことを説いた。いわば、実体経済を尊重する機運こそ立て直しに必要。日本は胸を張ってその思想を世界に訴えるべき」と強調した。
 セミナーの最初には、小田原市教育委員会が製作した、尊徳の生涯と哲学を要約したアニメ(ポ語字幕付き)が上映された。さらに、十一月二十八日に金次郎の生家前で行われた石像出発式で松沢成文(しげふみ)県知事が「(昨年)六月にブラジル訪問した時、報徳思想を胸にジャングルを開拓されたとの話を聞き、いたく感銘を受けた」とのあいさつを行った時の映像が流された。
 同知事代理として県知事室長の鴻谷正博氏が挨拶し、それに続いて、玄孫である二宮精三氏はポ語の文面を読み上げて挨拶し、「ブラジルでも尊徳精神で子弟教育に邁進されていると聞き、子孫として感無量の思い」とのべ、感謝した。
 ジャクピランガ市とパリケーラス市の日本移民百周年祭実行委員長を務め、両市に二宮像を建立した斉藤咲男さんも、「小さい頃、母親から二宮尊徳のようになれと繰り返し言われた。百周年を記念して作るならこれしかないと思った」とのべた。聖南西・リベイラ沿岸百周年実行委員会をしていた山村敏明会長も、同地の入植の歴史を説明した。
 草山館長は約二時間に渡って、尊徳の思想が生まれた経緯を分かりやすく説明、生涯に六百カ所もの財政再建を果たした生き様をじっくりと語り、来場者は感心したように聞き入っていた。
 最後に、文協の山下譲二副会長は「百一年目に相応しいセミナーでした。この哲学をどう三世、四世に伝えていくか。これからの大きな課題」と総括した。
 客席中央に陣取って熱心に聞いていた高世博司さん(69、神奈川県出身)は、「尊徳翁は開拓精神が日系社会と共通している。十五歳で極貧になり、荒れ地の開拓などで時代に乗り、十五年で名をなした。二世らにもこの開拓精神は伝わるはず」と感想を語った。
 また、加賀谷アサさん(74、秋田県)は「予想以上のとても素晴らしい話が聞けた」と満足した様子だった。