ニッケイ新聞 2009年2月12日付け
野球ソフトボールの五輪復活プロジェクトを進める早稲田大学ソフトボール総監督、吉村正氏(63、同大学教授)が七日来伯し、十二日までソフトボールの指導やティーボールの普及を図っている。二〇一二年のロンドン五輪で野球ソフトボールが正式種目から姿を消し、一生懸命練習している選手たちの目標の一つが失われる可能性がある。吉村さんは数年前から正式種目復活への手立てを独自に練ってきた。
二〇一六年の五輪開催地に立候補しているのはリオ、東京、シカゴなど。二〇一四年にブラジルでのサッカーW杯開催が発表されたため、「すぐ二年後に五輪は難しいのでは」という下馬評があり、オバマ米国大統領の出身地であるシカゴの可能性が喧伝されている。
「先週は、米国フロリダの世界ソフトボール連盟本部でその話をしてきました」と吉村さん。シカゴはソフトボール発祥の地でもあり、米国球連も野球復活への働きかけをする意向だという。
しかし、「念には念を」と吉村さん。さらにその次、二〇二〇年の候補地として可能性が高いのは、東京もしくはブラジルと考え、以前から進めていたブラジルソフトボール強化プロジェクトをさらに推し進める。
開催国が正式種目復帰を働きかければ、実現の可能性が高い。そのためには、代表チームがメダルを狙えれば働きかけの動機が強くなる。
この十一年間に、自身を含めて延べ十六人が指導のために来伯した。百周年の昨年五月は特別に三人を日本に招聘し、早稲田大学で三週間特訓した。「本当にうまくなった」と振り返る。
ブラジルソフトボール界に目標を与えるため、日本の一部リーグ実業団と交渉した結果、ブラジルからの選手を受け入れる見通しとなった。「今回、それにふさわしい選手も見にきた」という。
「ブラジルは二〇一六年の可能性が薄れたことで、むしろ準備に四年間のゆとりができた」。それなら「子供向きのティーボールで野球人口の裾野を広げたい」と考え直した。
このティーボールは今年から日本の二万校以上で十二年間、学校教育の中で教えていくことになった簡易野球とでもいうべきもの。投手がおらず、ティー(細長い台)の上にボールを置き、それを打者が打つ。
ブラジル野球ソフトボール連盟(大塚ジョルジ会長)が中心になって、国内で普及することになっている。
ブラジル球界のレベル向上ため、長期的、短期的にも親身になって考える吉村さん。「ブラジルは上手くなってきている。そしてもっと上手くなる」とうなずいた。