ニッケイ新聞 2009年2月18日付け
「もう一度戦ってもいい」――。二〇〇五年・〇七年に戦後一世を代表、現体制打倒に挑んだ谷広海氏(69、ブラジル日本語センター理事長)がニッケイ新聞の取材に対し、再々度の文協選挙にそうやる気を覗かせた。「とりあえずは静観。争ってまでボランティアの仕事をするのも…」としながらも、「もう一度一世が日本との関係や全伯日系団体との連携を強化したうえで、今の若い三世たちにバトンタッチしてもいい」と未だ文協への思いは熱い。ただ今回は、谷氏が会長となる可能性とは別に、現文協副会長である栢野定雄氏(74)を会長にたてた連合シャッパを作るとの情報も。すでに今月初旬に谷氏と会合を持った栢野氏は、「仕事も忙しいし、会長になることはあまり考えていないが、文協をよくするために一緒にやることは有り得る」と含みを持たせた。
評議員選挙への立候補締め切りが今週末に迫った。各派がそれぞれの思惑を胸に秘め、水面下で活動を進めている。
中央を囲い込む形で地方文協と結束を強め、シンパの評議員立候補者を五十人以上集めたとされる小川彰夫氏。
現体制の司令塔で「新執行部任命が最後の仕事」とすでに理事会シャッパを手掛けているとされる現評議員長の渡部和夫氏。
相容れない両者の動きの狭間でその動向が注目されていた戦後一世グループの代表格である谷氏が立候補への可能性を示唆した。
「今の文協を満足に思っている人はいない」と手厳しい。「上原会長は拍手をもって送り出し、渡部体制を変えるべき。ふさわしくない人が(次期会長に)なるのなら、阻止しなければ」と続ける。
谷氏や渡部氏とも親しい関係者はいう。
「渡部氏を中心にした今の体制を一世派だけで崩すのは無理」。そこで出来た筋書きが今年四月の総会で日本カントリークラブの会長を辞任し、現文協副会長である栢野氏を会長候補にたてたシャッパだという。
渡部氏とはピラチニンガ文協時代から五十年以上の付き合いがある同氏は以前、国士舘センターの運営委譲を文協に迫った地元勢の立場に立ち、評議員会で渡部氏に対峙した。「渡部氏に物言える数少ない一人」(関係者談)。
建設会社を現役で経営していることから、「仕事もまだ忙しいし、会長になることはあまり考えていない」というが、すでに今月初旬に谷氏と会合を持ち、「文協をよくしようと思う気持ちは同じ」と意思の確認を図ったようだ。
現在アルゼンチンに滞在している谷氏の帰国(二十六日)を待ち、再度会合を開く考えだという。