ニッケイ新聞 2009年2月19日付け
ブラジルと米国の気象観測調査団は十七日、宇宙衛星の撮影記録と気球観測からアマゾン熱帯雨林を被っている雲が、かつての湿気を含んだ厚い積乱雲から乾燥した霞のような巻雲に変化したと発表したことを十八日付けフォーリャ紙が報じた。これは、森林伐採により上空の水分配置に変化を引き起こし、地上と上空の降雨現象にも影響を及ぼしているためと推測される。同調査団は、これがアマゾンのサバンナ(半乾燥地帯)化を物語るものと述べた。
現在はアマゾン熱帯雨林が、大量の淡水を蓄え、水力発電やその他のエネルギー供給に役立っている。しかし、森林伐採や植物生態系破壊により、水資源サイクルは断たれつつある。
Inpe(宇宙観測研究所)で天気予報や気候観測を行うルイス・マッシャード教授は「アマゾンに思いがけない異常現象が発生しつつある」と警告した。研究成果は米国の科学機関誌「PNAS」に発表される。
同じくInpeの気象学者カルロス・ノブレ氏も、「アマゾンのサバンナ化が、法定アマゾン全域であるかは目下検索中であるが、広範囲に降雨が減少する可能性はある」といっている。
アマゾンはかつて、一週間に十日雨が降るといわれた。乾期でも降らない日はなかった。そのアマゾン熱帯雨林の南側と東側の伐採が盛んであった地域に、目に見えて変化が起きている。サバンナの気候で、乾期と雨季がはっきりしてきた。
最初にアマゾンのサバンナ化に警鐘を鳴らしたのは一九九五年、エレン・クトリン女史。当時は誰も取り合わなかったが、現在は因果関係が証明された。雲の変化は、地上の温度が上昇したことを意味する。
温度上昇と空気の乾燥で、サバンナ化がさらに進行する。関係者間で呼んでいた「緑の海」は、人類や動植物に命の源「水蒸気」を提供したが、いま消滅が始まった。
緑の海が消滅すれば、水蒸気もエネルギーも消滅し、地球は「死の惑星」になる。宇宙衛星のなかった時代は、霞雲がもたらす影響に関心が薄かった。しかし、現在は地球の表面と大気圏の関係は、常識となった。
アマゾンのサバンナ化に異論もあるので、断定はできない。米気象学者のコックス氏は「アマゾンの危機二〇五〇年」を発表。しばらくは、密林保全に必要最低限の降雨はあるらしい。