ニッケイ新聞 2009年2月21日付け
エンブラエル(航空機製造公団)が十九日、従業員四千二百人の解雇を発表したことで、ルーラ大統領は憤慨の意を表し、同公団のフレデリコ・クラード社長を大統領府へ呼び事情説明をさせると二十日付けエスタード紙が報じた。
同公団は米国やフランス、シンガポールに工場を有する世界第四位の航空機製造企業で、二万千四百人の従業員を擁する。その二〇%が今回、解雇通知を受けた。
同公団は、政府保証でBNDES(社会開発銀行)から十分な資金を提供された模範企業だ。それが金融危機を理由に政府へ打診することもなく、真っ先に従業員を解雇するのは無神経にも程があるというのが大統領の心境のようだ。
エンブラエルの航空機受注先は、金融危機の打撃が最も深刻な欧米市場が九〇%を占め、注文が激減し操業短縮を余儀なくされた。エンブラエルの操業短縮は、パライバ地方の下請けや傍系企業にも一斉解雇を強いることになりそうだ。
同公団は前以って、マンテガ財務相に事情を説明するためアポを取った。しかし、財務相が会合を忘れたため、大統領にも報告が入らなかった。同公団と労組との接触も少なかったようだ。大統領や労組を怒らせるような関係が、平素からあったらしい。
解雇された従業員は、殆どがサンジョゼ・ドス・カンポス工場の従業員であった。解雇は技術部門をさけ、下級労働者と管理部門、幹部職に及んだ。解雇は午後四時に文書で通告され、職員の中にはショックで気絶した者まで出た。
国際情勢の変化は誰もが感づいていたが、操業時間の短縮や減俸、集団休暇で乗り切りを図るものと思っていた矢先の出来事だったため、動揺が大きかったようだ。