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ぴんころはみんなの願い=日本の高齢者は今=連載《2》=理想と現実の狭間の介護職員

ニッケイ新聞 2009年2月28日付け

 施設はホームの建物がいくら立派でもだめで、介護職員(日本ではスタッフという言い方をしています)がいて、初めて介護ができます。介護職員は学校で専門教育を受けただけでは役に立ちません。本当に必要とされているのは、ベテラン介護職員。豊富な現場経験を積んで初めて一人前になる訳です。
 しかし、厳しい就労条件と賃金の問題で、施設によっては平均勤務年数が二、三年と言われています。福祉の現場に憧れて就労したものの、生活が出来ずに理想と現実の狭間で悩んでいる職員は少なくありません。特に男性や夫婦共働きに多いようです。
 「世の中に介護福祉士の資格を持っている人は多いんですけど、夜勤を含めて、本当に任せられるベテランは少ないんですよ。どこでも引っ張りだこです。慢性的な介護職員不足です」とは、横浜のある施設の主任の弁。
 日本の特養ホームの基準では利用者三人に対して一人の介護職員が必要です。新型特養ホームでは個室を中心としたユニット(単位)といわれる方式で設計されています。普通一ユニットは十二人の利用者で、職員数は四人となります。最低一人の職員でも十二人なら目の届く範囲なので都合がいいわけです。
 夜勤はというと、二ユニットで一人が現実のようです。その時は、最悪おむつ交換二十四人分を一人で行うそうです。もちろん急に利用者の具合が悪くなったとか、けがをした時は対処におおわらわ。新人の職員や研修生が入ってきた場合には、つきっきりで指導もしなければなりません。
 ちなみに、ブラジルの特養ホームの場合、認知症を含め、様々な状態の人が入居していること、施設形態の違いや労働法による職員の勤務時間、年次休暇の関係でどうしても日本より夜勤人数が多くなります。
 さて、施設は運営をしています。入居希望者もたくさんいます。でも職員が足りません。となると、法律により部屋が余っても受け入れできない状況になってしまいます。
 そのためか、二〇〇八年度からインドネシア共和国から政府間協定によって看護師、介護士が日本に就労に来ています。半年間の日本語学習の後、今年から現場に派遣されることになっています。ちなみに給与は日本人と同等の保障がされています。試験的に勤務を始めた施設でも、応対が優しいということで好評のようです。
 でも、これが介護人材不足の根本的な解決になるでしょうか。結論はまだまだ先です。(つづく、川守田一省・援協広報渉外室長)

写真=従来型特養ホームの居室(4人部屋)の様子。畳と布団で寝る人も多い。入所申込みは非常に多いそうだ