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「ブラジルの労働運動は未熟」=労働運動専門家が批判=労組幹部が政権の高官に=好況期に闘争心忘れた?

ニッケイ新聞 2009年3月3日付け

 労働運動の専門家らが二月二十八日、CUT(統一労組)やフォルサ・シンジカル(労組総同盟)の二大労組を始めとする労組は、経済危機に際し労働者を保護できず、経済や社会情勢も把握できず、ルーラ政権の方策にも同調できない未熟さを露呈と批判したことを三月一日付けフォーリャ紙が報じた。一部労組は雇用継続のために企業と労働時間削減や減俸協定を結んだが、過去四カ月で七十九万七千五百人の失業を引き止めるには至らなかったと苦言を呈した。

 恐慌がもたらした労働市場への影響で、労組の対処は拙劣であった。解雇攻勢に対し労組は、連携性と効率性を欠き、労働者の権利保障で歩調を乱した。労働運動とは、連帯性が重要だとする労働運動の指導者による批判がある。
 カンピーナス大学労働社会学のリカルド・アントゥネス教授は、「指導者から見て労組の対処は、企業のペースに乗せられ、受身であった。また企業の解雇は不意打ちで、労組は虚を突かれたため、応戦態勢を欠いた。これは労組が泰平の時代に慣れ、労働運動の精神がさびついていたからだ」という。
 ブラジルは昨年八月まで、豊作の時代であった。労組は居眠りしていても、労働者は企業からプラス・アルファーを受け取っていた。そこへ突然、凶作の時代だ。労組は寝耳に水の恐慌で慌てふためき、不況時に置ける労働者の権利など頭になかったようだ。
 また、アントゥネス教授は「労組は、ルーラ政権の囚人という枷をはめられている」という。多くの労組幹部は、政府高官に召抱えられ、数々の恩典を享受している。二〇〇八年には約十億レアルの組合税が入り、組合は八月にその一部、五千五百六十万レアルを政府から貰った。
 恐慌を事前認識した企業は、投資や生産を削減し、労働者も調整した。それを労組が察知しなかったのは怠慢だ。労働者には減俸や労働時間短縮のしわ寄せがあったが、企業に営業益の削減はなかった。
 経済情勢の急激な変化で、労組は反射的に受身の姿勢をとった。最低賃金の調整で頭が一杯であったため、昇給を要求すべきところ労組は解雇阻止へ走った。労働運動の基本である話し合いで、ブラジルの労組は足並みが揃わない。
 前述のアントゥネス教授は、「今回の危機で労組は多くを学ぶはず。危機を通じて、ブラジルの労働運動には再構築の必要が出てきた」と批判した。