ニッケイ新聞 2009年3月5日付け
「日本の高校卒業資格なくても、放送大学に入学できます」。日本では十代から九十代までが通信教育を通して学んでいる生涯教育の中核機関「放送大学」が、いよいよブラジルにも拠点を作るための検討に入った。
二日に来社した同大学の東千秋教授は、「普通は六年ぐらいかかって卒業しますが、なかには十年がかりの人もいます」という。現在は、教科書を見ながら自習するしかないが、二~三年後にはインターネット経由で通信授業を受けることが可能になるという。
つまり、ブラジルに居ながらにして日本の大学に留学・卒業した資格が得られるようになる。ただし、現状では試験を受けたりするのは日本で行う必要がある。
でも、各都道府県に学習センターが設けられているように、東教授は「将来的にブラジル側の学生が二百人を超えるようになれば、こちらにも学習センターを作って日本から出張に来ることも可能」だという。移住者はもちろん、駐在員とその家族も視野にいれて考えている。
同大学は文科省が運営しており、すでに五万人の卒業生がおり、現在九万人が学んでいる。多彩な学科・科目があり、卒業すると教養学士号が授与される。また必ずしも卒業を目指さず、自分の勉強したい講座だけを受講することも可能。
今回、東教授はサンパウロ市の国際交流基金サンパウロの図書館に全三百六十科目の教科書を、リオの総領事館の広報日本文化センターに七十科目分を寄贈するために来伯した。そこで教科書の内容を確認することができる。
放送大学の客員教授でもある森幸一USP教授は「ユニークなのはたとえ小学校卒でも、放送大学には入学できる点。卒業者には大学院もあり、修士取得できます」と薦める。勉学半ばで幼少渡伯した層が勉強をやり直すには、うってつけの制度かもしれない。
なお、東教授は一九八〇年から六年間、リオ連邦大学で教鞭をとった経験がある〃ブラキチ〃教授。二月二十四日に来伯し、五日に帰国する。詳細はサイト(www.u-air.ac.jp/)まで。もしくは東教授(azuma@u-air.ac.jp)まで直接に問い合わせを。