ニッケイ新聞 2009年3月5日付け
昨年の百周年は特別に多かったが、サンパウロにいると日本からの文化使節団の公演などに触れる機会が多い。その多様多彩ぶりに胸を張りたくなるが、能や歌舞伎などのいわゆる伝統芸能に対しては、ブラジル人と同じ感覚で鑑賞している気がしないでもない。つまり、生まれた国の誇るべき文化ではあるが、自分の血となり肉となっていないという意味だ▼では若者が発信するポップカルチャーはどうかというと、漫画やアニメの隆盛期に少年時代を過ごした記者だが、いつの間にか理解の外。アニメキャラクターの格好を模倣するコスプレなどは、世界的に知られた日本文化だが、個人的にはサンバやフラダンスと同一線上にある異文化だ。しかし、リベルダーデ駅前にたむろする奇妙な格好をした一団を例に挙げるまでもなく、海外の若者にとっては一番身近なニッポンなのだ▼昨月二十六日、外務省は最新の日本文化を広報する目的で、三人の女性をポップカルチャー発信使(通称カワイイ大使)に任命した。ロリータファッションのモデル、原宿系ファッションのカリスマ、「ブランド制服」で売り出し中の女優ー。困惑顔の読者の姿が目に浮かぶ▼数年前、世界の日本食レストランに農林水産省がお墨付きを与える制度「すしポリス」を思い出した。各地から批判を受けたが、〃正しい文化〃を伝えるという主旨は同じ。さてこの三人、今月はタイ・バンコクの文化行事、七月にはフランス・パリで開催される「ジャパン・エクスポ」に参加する。大西洋を越え、県連主催の「フェスチバル・ド・ジャポン(日本祭り)」に寄ってほしいものだが。(剛)