ニッケイ新聞 2009年3月7日付け
吉岡黎明氏が文協会長候補に―!? 四月二十五日の理事会選挙に向け、吉岡氏を会長候補としたシャッパ(立候補者連記名簿)作りが進められていることがニッケイ新聞の取材で分かった。渡部和夫氏(文協評議員会長)、栢野定雄氏(文協副会長)が中心となり調整が行われているもの。これを受けてか吉岡氏はすでに二月中旬、委員を務めていた選挙管理委員会に辞任届けを提出、出馬の意思を固めているようだ。「救済会」や「文化教育連帯学会(ISEC)」の現会長のうえ、会計問題の解決しない百周年協会の総務委員長も務めている同氏の立候補に批判の声も上がっている。同じく会長出馬を決めている小川彰夫氏は、「文協の将来の役割を考えず、体制を守るための人選。本当に人材がいないことが会員も分かるのでは」と牽制している。
「吉岡氏が会長候補だったら、小川に投票する」と某評議員は話す。
ブラジル日系社会の代表団体であり、日本との連絡に加え、喫緊の問題とされている全伯日系団体との連携など、百周年後の文協に課せられた役目はあまりに大きい。
それだけに日系団体関係者も「文協の会長が片手間にできるわけがない。専念しても難しいのに兼職は無理」と厳しく指摘する。
文協の実質的な権限を握り、今回のシャッパを取りまとめている渡部氏の構想では、副会長に責任を与えた合議制を取ることによって、会長個人への重圧を避けるとしている。しかし、前回の上原幸啓会長を立てた選挙のさいも同様の説明だったが、全く機能しなかったことは明らかだ。
副会長候補には、山下譲二、木多喜八郎、栢野氏らがすでに名前を連ねている。すでに打診があった高木ラウル氏は、「吉岡氏が会長では難しい」と話す。
サンパウロ人文科学研究所の宮尾進顧問は、吉岡氏が以前、百周年の総務委員長でありながら救済会の会長に就任した際、「聖徳太子じゃないんだから、人間色々できるもんじゃないよ」とたしなめたというが、「今回も本人から話を聞いたけど、何もいうことはない」と苦笑いする。
渡部氏は栢野氏とともに「救済会」の理事らとすでに会合、「救済会の会長も続けてもらう。迷惑は掛けることはない」と事情を説明している。
相田祐弘・救済会副会長は、「話を聞いた理事らも『負担がかからないなら…』という意見でしたが、結局は本人の判断ですから」と話しながらも、「副会長の立場からいえば、全く影響がないことはないですよね」と続ける。
栢野氏といえば、谷広海氏らと接近、会長候補とも目されていたが、「現役で仕事しているし、年だしね。トップというのはちょっと…。副会長として協力したい」と戦後一世派との連衡は事実上なくなったようだ。
ある文協理事は、「会長として吉岡氏を推す人は多くないのでは」と言葉を濁しながら、「文協には現在も色々な問題があるが、誰も手をつけようとしない。選挙だけに一生懸命になっている状況はおかしいのではないか」と内部から厳しい意見を寄せている。