ニッケイ新聞 2009年3月10日付け
【静岡新聞】不況の影響でブラジル人学校に通えなくなった子どものために、浜松カトリック教会(浜松市中区富塚町)で二月から無料の〃学校〃が開校し、就学年齢の子どもたち三十二人を受け入れている。外国人児童・生徒の不就学の実態把握が難しい中、教会ボランティアの支えやネットワークが生かされた形。子どもたちは再び勉強し、笑顔を取り戻し始めた。
「これ分かった!」。教会の会議室などを利用した教室で、子どもたちの元気な声が響く。六―十六歳が三クラスに分かれ、週三回ポルトガル語、数学、日本語の授業を実施。教師を務めるのはブラジル人学校を解雇された元教師や同教会のシスターで、ボランティアが給食を調理するほか、午後はサッカーや音楽、図工などの授業も行う。
子どもたちは市内だけでなく磐田、袋井市などからも通う。磐田市在住の男子生徒(14)は父親が失業してブラジル人学校の授業料を払えなくなり、昨年末から約二カ月間学校に通っていなかった。「こんなにたくさんの友達と勉強できて幸せ。ずっと通いたい」と目を輝かせる。
教室は浜松学院大が文部科学省の委託を受けて「コミュニティ・キッズ教室」として企画した。三月末まで同省の補助を受けるが、あくまで「学習の継続」が目的の緊急支援策。現在も約十人が入校待ちという状態で、スタッフの佐藤伊三久さん(70)は「ボランティアだけでは限界がある。せめて先生やスタッフの生活費は保証してあげたい」と話す。
教会では信者らが失業者らの相談に乗ったり生活支援を行ったりしているが、昨年からの景気悪化を受け、食料の配布先も二百件を超えているという。山野内公司主任司祭(51)は「(教室は)支援者がいて初めて成り立っている」と感謝し、「四月以降もなるべく教室を継続したい」と語る。