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新アルモニア学園=幼稚部新校舎が落成=サンベルナルド=構想4年で迎えた節目の日=「子孫のため良い学校を」

ニッケイ新聞 2009年3月11日付け

 サンベルナルド・ド・カンポ市のアルモニア学園で八日、一昨年六月から建設を進めてきた幼稚部新校舎の落成式が挙行された。百周年を記念して幼稚部と高等部の新校舎を建設する「新アルモニア学園」プロジェクトとして進められてきた同事業。当日は四百人以上が訪れ、プロジェクトの最初の節目を祝った。

 抜けるような青空が広がった落成式当日、会場の体育館には生徒、父兄や学校関係者をはじめ、同市、近郊の日系団体代表者、同校の前身であるアルモニア学生寮を建設したブラジル力行会(永田久会長)の関係者などが多数足を運んだ。大部一秋在聖総領事やウィリアン・ウー連邦下議、地元サンベルナルド市教育局のテレジーニャ・タデウ・ピーレス氏(ルイス・マリーニョ市長代理)、南洋行市議なども訪れた。
 記念式典は午前十時に開会。同校を運営するアルモニア教育文化協会の和田忠義会長は「百周年のシンボル」として同校校舎落成を喜ぶとともに、輪湖俊午郎、破魔六郎氏ら創設者から現在にいたるまでの協力者の名を挙げ、「(彼らへの)顕彰の気持ちを忘れてはいけない」とあいさつ。
 さらに人間形成における倫理、慈愛と社会的責任の重要性を強調。「国を背負う子や孫たちに良い学校を残したい」と述べ、事業推進に意欲を見せた。
 学生寮二期生で同協会評議員会長を務める渡部和夫氏もあいさつに立ち、同校が日本文化普及に果たす役割を挙げながら、プロジェクト第二段階に向けたさらなる支援を呼びかけた。また日本政府に対しても「日伯関係緊密化のため当事業に特別な配慮をお願いしたい」と述べた。
 同事業コーディネーターの大浦文雄顧問が日本語で、学生寮建設からの歴史を振り返り、「百周年後の将来に何を残すべきか」を考えた末に同事業が始まった経緯を説明。また、ブラジル公認の日系学校で作る「日伯教育機構」を通じて横の連絡と日本などとの対外交渉を進めることに期待を表わし、「今日落成したこの校舎から、子供たちが日伯の良い文化を身につけ、健やかに育つことを願います」とエールを送った。
 大部総領事は「アルモニア学園が日伯交流の掛け橋となる人材育成に貢献してきたことを嬉しく思う」と述べ「教育こそ未来を作る事業。アルモニア学園の百周年事業はこうした要請に応えるもの」と称賛した。
 上原幸啓文協会長、ウー連議、ピーレス氏らの祝辞に続き、幼稚部生徒のステファニ・サキ・ノチ・オチアイさん、イーゴル・カンパネリ・デ・アキノ・シルバさんが日ポ両語で「新しい幼稚園ができて嬉しい」と感謝のあいさつをし、会場を和ませた。
 最後は観客席の生徒たち百五十人ほどが、「世界に一つだけの花」など日本、ブラジルの歌を披露し、出席者から大きな拍手を送られた。
 式典終了後は校舎の入口で来賓によるテープカットと鏡割り。続いて校舎内に移り、協力者の名前を刻んだ記念プレートを除幕した。
 来場者はその後、思い思いに真新しい校舎を見学し、子供たちは新しい学び舎の中を楽しそうに歩いていた。昼食にはシュラスコなどが振舞われ、午後まで賑わいを見せた。
 日伯教育機構の赤間晃平アントニオ理事長(赤間学院前理事長)は、「日系学校が育つことはいいこと。教育への熱心さの現れだと思う」と述べ、同機構についても「現在はあまり動いていないが、ゆっくりと進め横のつながりを強めていきたい」と話す。
 スザノ日伯学園を運営する汎スザノ農事文化体育協会(アセアス日系)の森和弘会長は「皆の支援があってこれだけ立派なものができた。たいしたもの」と感想を話し、「これからは日系団体も教育に力を入れることが必要だと思う」と話していた。

新アルモニア学園プロジェクト=次は高等部校舎建設へ

 勉学のため地方から出聖する日系子弟のために建設されたアルモニア学生寮を前身とするアルモニア学園。九三年の創立四十周年を機にブラジル公認教育機関として幼稚部を開設した。以後、中・高等部が順次始まり、現在は三百六十人の生徒が学ぶ。日系の生徒の割合は約三分の一で、日本語を必修科目に取り入れるなど特色ある教育を展開している。
 「新アルモニア学園」プロジェクトは百周年を記念して二〇〇五年に構想された事業。建設委員会では日本政府にも支援を要望し、故橋本龍太郎首相にも会うなど運動したが思うようにいかず、自力での事業推進を決定。三千人に上る旧寮生や日伯の協力者の支援を受け、今回の幼稚部校舎落成式を迎えた。
 体育館に隣接した新校舎は、床面積千二百三十一平方メートルの三階建て。当初は二階建ての予定だったが変更し、より広い面積になった。一階に教室、二、三階に遊戯室などの部屋が設けられている。
 建設資金約百四十万レアルのうち三分の二は旧寮生からの寄付によるもの。仕上げの作業を終えた後、幼稚部生徒が使用し、旧幼稚部校舎は高等部で使用する。
 「新アルモニア学園プロジェクト」第一段階が節目を迎え、今後は第二段階の高等部校舎建設に移る。和田忠義会長は、幼稚部校舎落成を終えて「ホッとした」と笑顔を見せながらも、「不況の中、簡単ではないと思うが、資金集めを進めていきたい」と第二段階に向け意欲を見せていた。