ニッケイ新聞 2009年3月12日付け
IBGE(ブラジル地理統計院)は十日、〇八年第4四半期のGDP(国内総生産)が前期比でマイナス三・六%と発表したことを十一日付けフォーリャ紙が報じた。これはIBGEが現行方式で統計を取り始めた一九九六年以来、最悪の成績で、恐慌の本格的襲来と思われる。三十七カ国のそれと比較すると、ブラジルは政府の予測とは大きく異なり衝撃が強かった国の一つで、下には韓国と台湾、タイ、エストニア、インドネシアしかない。GDP落ち込みの原因は、消費減退と投資縮小とされる。
〇八年第4四半期のGDP劇的落ち込みは、政府関係者を慄かせた。金融危機が表面化した九月から十二月までに、ブラジルは産業活動が激落した五カ国の一つ。政府関係者は恐慌を甘く見たようだと、アナリストは次のように分析した。
ルーラ大統領は十月十日、「ブラジルは、米発恐慌に抵抗力のある国であることを誇りに思う」と公言した。マンテガ財務相は「第4四半期に前年同期比三・五%の経済成長を期待する」と宣言した。しかし、どれも空論となった。
混乱前の奇跡的活況は、危機上陸でGDPの衝撃的収縮につながったようだ。米国が〇七年十二月から減速経済にあったのに、ブラジル経済は12四半期にわたって、順調に推移していた。
第4四半期のブラジルの落ち込みが大きいことは、他の国よりも大きな不況に見舞われたという意味ではない。欧米や日本、アジア諸国はブラジルより早く景気後退(リセッション)状態に入ったので、第4四半期での落ち込みは小さかった。
世界のGDPは〇八年第2四半期から萎縮を始め、第3、4四半期には落ち込みが明白となった。それでもブラジル経済は、第3四半期までは極めて順調な成長を続け、国際的傾向に流されなかった。
ブラジルが牽引するラテン・アメリカ諸国では、第4四半期のGDPがブラジル以上に落ちた国はない。ブラジル同様、第4四半期に減速経済を記録した亜国のGDP成長率はマイナス〇・三%で、年間GDP七%を辛うじて保っている。
対米一辺倒のメキシコは、米国の破綻で被害甚大。経済は、マイナス二・七%で停滞状態だが、出稼ぎの送金で食いつないでいる。
世界が不況で喘ぐ中、一人気を吐いているのがベネズエラで、GDP成長率は七・五%を記録。
気になるBricsの中国やロシア、インドは四半期決算や前期比比較を行わないので、ブラジルと直接比較できない。IMF(国際通貨基金)の予想では、ブラジルの経済成長が他の新興国を上回るのは困難なようで、ブラジルのGDP成長予想は三・三%から一・八%に下方修正された。