ニッケイ新聞 2009年3月12日付け
精神的無国籍者という言葉がある。戸籍上の国籍はあるが、自分が何人かの確信がない。国外生活経験者や複数言語併用者にも見られる現象だ。
六日付け本紙の樹海にもあるように、複数言語併用者は、言語運用能力や知識面などで中途半端になる危険性もある。
これは、各言語や知識習得にかける時間が分割されてしまい、全ての時間をかけて学習する人並みの能力や知識の習得が困難なためだ。
その一方、一つの言語での知識が別の言語での知識習得を楽にし、補完し合うこともある。
混血児を半分の意味のハーフと呼ぶ人と、二つの文化や特性保持の意味でダブルと呼ぶ人がいるが、複数言語併用者が各言語での知識や能力を相互補完させた真のダブルとなるには、本人の能力や努力と共に周囲の配慮も不可欠だ。一人でも多くのダブルよ育て、と心から応援しつつ。(み)