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■記者の目■JICAブラジル事務所=「日本で記事出してちょ~だい」=〃特派員限定〃説明会=コロニア軽視の広報活動

ニッケイ新聞 2009年3月13日付け

 「我々の活動を是非、記事にして頂きたく存じます」――。
 国際協力機構(JICA)ブラジル事務所の芳賀克彦所長は十日にサンパウロ市イタイン・ビビ区のブルーツリーホテルの会議室で行った説明会『新JICAとブラジル』の最後、参加した記者らにそうお願いし、媚びた笑いを送った。
 JICAの歴史や現在ブラジル内で行っているプロジェクト、日系社会支援に関するこの時期の説明会はあきらかに予算消化だろうが、〃日本の報道機関特派員記者限定〃で邦字紙には何の連絡もなかった。
 芳賀所長のいう「記事にして欲しい」というのは、日本の大新聞、大通信社を通したJICA本部、外務省に対する効果を見込んだもので、コロニアへの広報の必要性は、認めていないと見られても仕方ないだろう。
 説明会前日、この説明会の存在を知った本紙記者は早速、サンパウロ支所に問い合わせた。千坂平通支所長は、「ブラジリア事務所主催なので分からない。そちらに聞いて欲しい」と話した。
 だが当日、何故か会場にサンパウロ支所の職員がおり、出席の可否を尋ねると「…席はありませんよ。ブラジリアの担当に聞いてください」と記者と旧知の仲であるにも関わらず、すげない対応に終始した。
 芳賀所長は招かれざる客である記者の訪問に「今回は特派員の方に、ということなので…」と明らかに困惑顔を見せ、「それでは邦字紙、つまりコロニアに対して後日、説明会を行うのですか」との問いには、「その予定はありません」と憮然としつつ、きっぱりと答えた。
 参加を申し出る記者を尻目に、担当の女性職員は、「余分の資料があるかどうか…」。意向を伺われた形の芳賀所長の「席があれば大丈夫じゃないかな」との言葉で、末席が与えられたが特派員に用意されたペンとメモ用紙はなかった。
 「邦字紙はいつも書いてくれているので、あえて説明の必要はないかと思いまして」と芳賀所長。つまり、邦字紙は頼まなくても書くが、特派員には懇切丁寧な説明とご接待が必要と考えたのだろう。
 ちなみに出席した四人の特派員に説明するために芳賀所長を含めブラジリアから、一対一態勢で四人が来聖。同夜には、高級日本食レストランで懇親会が持たれている。
 さらには、ある特派員に交通費の支給まで申し出たというのだから、まさにいたせりつくせり。FAX一枚で済ませられる邦字紙との差たるや歴然だ。
 さて、今年はサンタカタリーナの災害対策計画、マラニョン州イタキ港拡張に関する調査に協力するなど、日本政府のブラジルに対するODA貢献は大きいが、ブラジルメディアに対する広報は十分だろうか。
 現在は大使館や総領事館の分室という立場にあるJICA。日本の方ばかり向いているのではなく、その存在や活動を広くブラジル国民、社会に知ってもらうために、投資先国に対するさらなるアピールが必要だろう。
 説明会の終わり、芳賀所長は、戦後にコロニアが日本にララ物資を送った例を引き、「今は支援する立場の日本が将来困ったとき助けてくれるのは、ブラジルではないか」としみじみと語っていたが、ブラジルが世界有数の親日国たる所以は、百年の歴史を持つコロニアにあることを再度深く認識すべきでは、とご注進申し上げたい。  (剛)