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SIP=政府発言のチャベス化を憂慮=ブラジルも含めて=強圧的表現に脅迫を内包=10月から6人記者が犠牲に

ニッケイ新聞 2009年3月19日付け

 南北米千三百媒体で組織される米州報道連盟(SIP)は十六日、ラテン・アメリカで報道の自由が脅威にさらされているとする報告書を発表と十八日付けエスタード紙が報じた。同報告書によれば、ヴェネズエラやキューバ、パラグアイ、メキシコなど法秩序が不備な国と同じように、ブラジル政府要人の強圧的表現の中にも報道関係者の危険が内包されているという。SIPは、マスコミに不快な表現があると、政府当事者としてあるまじき言葉で報復するとして、ルーラ大統領をチャベス大統領と同格に置いている。

 チャベス大統領の演説表現は、恫喝的だ。モラレスやコレア、オルテガ、ゼラヤ、コロン、ウリベなどの大統領が口調を真似るようになった。そこへブラジルまでも、チャベス節を真似ていると報告書が訴えた。
 米国では金融危機のために政府の大口公的資金が投入され、それに群がる政府高官や民間人の不正行為が横行している。体を張って着服を暴くべきマスコミには、最大の危機といえる。
 アルゼンチンでは、政府と癒着する労組幹部が、ラ・ナシオンやクラリンなどの新聞社印刷所に乗り込んで狼藉をはたらいている。
 SIPにとって過去六カ月、メディアに対する政府の態度は悪化した。十月以後だけで、新聞記者六人が暗殺された。キューバはラウル・カストロ首相に代わっても、新聞記者二十六人が二十八年の刑で拘束中。
 米国の場合は少し違う。出口のない迷路で往生している。世論の良心といわれる有力紙が経営のためとはいえ、政府の犬になるか民間企業のお先棒担ぎになるか、閉刊かの岐路にある。
 報告書はピアウイー誌の記者会見を取り上げ、報道を見たルーラ大統領が吐き気を催すと応えたことを指摘。二〇〇四年には、ニューヨーク・タイムスのラリー・ローサー記者が「ルーラ大統領のアル中は、国家的心配事」と報道したことで滞在ビザを取り消されたこともある。
 最も辛らつなのはウルグアイの大統領が、新聞記者を「蛆虫」と侮辱したこと。
 他にSIPがブラジルに対して指摘する問題は、政府がマスコミを政治宣伝へ過度に利用し、報道の独立性を侵害したり、政府にへつらう報道機関を優遇すること。
 SIPの方針は、報道機関にあらゆる角度からの見方をさせること。情報操作のため、マスコミを政府御用紙やテレビ局に、変身させられることを憂えている。