ニッケイ新聞 2009年3月24日付け
「境界を超えた水資源」をテーマにトルコのイスタンブールで開かれた世界水フォーラム最終日の三月二十二日は「世界水の日」で、伯字紙も関連記事を掲載した。
国境をまたぐ河川や滞水層は紛争の火種になりうるため、世界では、過去六〇年間で約三〇〇件もの国際協定を締結。水を巡る紛争は三七件のみで済んでいる。しかし、水の確保がより困難になる今後は、紛争が増すとの指摘さえ出ている。
一方、比較的恵まれた環境にあるのはブラジルで、隣国と共有する水源を含めると、世界の淡水の一二%、南米の川や湖水の五六・九%を占める。
しかし、このようなブラジルでも地域の水源だけでは水が不足する地域がある。人口、工業生産などが集中し、世界有数の経済域を持つサンパウロ市やその周辺の大サンパウロ市圏も借り水の必要な地域の一つだ。
大サンパウロ市圏での〇二年~〇七年の統計では、一人当りの水消費量/日は〇四年が一五五リットル、〇五年一六三リットル、〇六年一七三リットル。
〇八年は一七二リットルと若干減少したが、その一方、サンパウロ市近郊の七つの水源地からの水の供給は、〇二年の七万二九〇〇リットル/秒が、〇七年には六万七八〇〇リットル/秒と年々減少。特に、カンタレイラからの供給量減少が目立つ。
水の供給量減少の背景には、供給システムでの漏水や不正な形で水を牽く水泥棒の存在が挙げられるが、供給量の不足は借り水で埋め合わされているのが実情だ。
サンパウロ州政府は内陸部からの借り水を増やす事を検討すると共に、新貯水システムを建設中だが、これ以上の水源確保が困難な大サンパウロ市圏での水不足解消法の一つは、漏水や水泥棒の防止と水の再利用だ。
洗濯用水の再利用などは家庭でも可能だが、最近増えたのはショッピングセンターや工場での再利用。環境保護や経費削減目的も含め、自社内に浄水施設を持ち、九七%台の再利用率を誇る業界や企業もあり、研究、実用は年々増えている。
水の再利用促進には下水処理率向上も必要だが、生活に不可欠の水の確保のため、効率化された再利用システム構築、乱伐防止や植林による水源確保など、多くの取り組みが待たれている。