ニッケイ新聞 2009年3月24日付け
今や「新聞離れ」は、世界的な潮流であり、何処も苦しい。アメリカでは地方紙の廃刊が続き、日本でも県単位で発行する地元紙の休刊や夕刊廃止が目立つ。我が邦字紙を読売や朝日両新聞などと比べる愚は避けたいけれども、読者と広告の減少は日を追い増える悲惨さである。いや、日本の雑誌も厳しく、青息吐息が多い▼コロニアで人気の月刊誌は「文芸春秋」だし、日本でも最大の販売部数を誇り、「週刊文春」も80万部でトップを走っているが、あの保守派論客の寄稿で鳴らしたオピニオン誌「諸君」が5月号で休刊と決まったのは、真に残念と申すほかはない。講談社「現代」も1月号で廃刊だし、朝日新聞は既に「論壇」の発行をやめている▼「諸君」の面白さは、掲載される論文の考え方もだが、最初に読むのは巻頭の「紳士と淑女」である。近着の2月号によると、30年前からスタートしたとあるが、どうもあれは1人で原稿を書いてきたものらしい。博覧強記で大毒舌の斬れ味は凄まじいばかりの魅力があり、あのシニカルで辛口な批判と反逆の精紳は堪らなくいい▼だがー世の活字嫌いは右肩上がりで文学や本格的な評論を読む人は少ない。まだ「正論」や「中央公論」と左翼系の「世界」は頑張ってはいるが、その昔の学生が必読の「世界」は読み手が急減し、岩波書店が看板を賭けていると仄聞する。あの列島には出版社が4000超もあるそうだが、ここから吐き出される「雑多な情報」ばかりに本好きも嫌気がさしての活字離れもあろうが、「諸君」の廃刊は残念無念である。 (遯)