ニッケイ新聞 2009年3月25日付け
サンパウロ市証券取引所(Bovespa)は二十三日、米政府がブラジルのGDP(国内総生産)にほぼ匹敵する一兆ドルの不良債権買取り計画ガイトナー・プランの詳細を発表したことを好感して、五・八九%と年内で二番目の大幅高を記録と二十四日付けフォーリャ紙が報じた。Bovespaの生命線といわれる四万二千ポイントを回復し、月一一・一四%の上げ幅となった。ただし、救済案の効果を不安視する声も上がっており、果たしてドロ沼から脱出できるのか、疑問も出ている。
ガイトナー米財務長官は、一兆ドルを投じて金融機関の不良資産を買い取る官民共同基金の枠組みの詳細を発表した。これで処理が急速に進むのではと期待が膨らんだのを受け、世界の株式市場が好感した。
ブラジルではドル通貨は〇・八%下げて、二・二四六レアルにつけた。金融市場は、今回の危機救済案を一服の清涼剤と見ている。銀行株は九月に金融危機が始まって以来、やっと安堵の色を見せた。次の攻撃がいつ起きるか分からないが、戦場の一休みといえそうだ。
ブラジルの銀行株は、ウニバンコUNTが一二・一五%高、イタウーPNが九・六三%高、ブラデスコPNが七・三九%高、ブラジル銀行ONが七・〇九%高と一斉に反応した。
これでブラジルの金融市場も潮の向きが変わりそうだが、大統領発言の「最悪事態は通過」には、まだ尚早という見方が強い。これからは、嵐で溜まったゴミの山、累積欠損の後片付けがある。
一方、IMF(国際通貨基金)のカーン専務理事は、恐慌の処理失敗は戦争につながると警告した。「恐慌は戦争と同義語である。金融危機が夥しい数の難民を生み出し、飢餓線上へ追いやった。世界各地で失業と社会不安が起こり、民主政治どころではない。地域的には紛争となって、戦争が始まっている。危機脱出は、不良債権処理と経済システムの正常化が急務だ」と訴えた。
経済評論家のセルソ・ミング氏は、銀行の国営化を行わず国家総動員令による米官民合同の不良債権一掃案に三つの疑問を呈した。第一は、銀行が不良債権から救われたとはいえ、それに代わる金儲けがあるのか。第二は不良債権の処分期間が不明瞭。第三が、優良債権と不良債権の分類法明記がない。「それがないと、救済案は糠喜びに終わる」と釘を刺した。