ニッケイ新聞 2009年3月27日付け
国際交流基金サンパウロ日本文化センターの所長、西田和正さん(60、熊本)が帰朝するにあたり、新任の内山直明さん(58、新潟)をともなってあいさつに来社した。昨年の百周年には、結城座、現代美術展、現代舞踊など通常のサンパウロの予算二億数千万円に倍する予算を使って主催事業を積極的に行い、ブラジル社会に伝統文化を広めた。この機会に、日伯交流年の成果を総括してもらうと同時に、日本語教育を含めた百一年目の現状と方針を聞いた。
基金は約千億円の原資を元に運営されているが、それだけでは足りないため、毎年、政府交付金を受けて活動している。この交付金が減少傾向にあり、世界各地の文化センターは予算を削られている状態だ。基金全体の年間予算は九七年の二百億円を最高に、昨年は約百六十億円まで下がっており、「今年は百五十億円台、間違いなし」という。
その厳しい中で昨年の百周年では、通常の予算に倍する五億円程度が注がれたという。これが何に使われたかといえば、主に主催事業だ。昨年二月の江戸糸操り人形の結城座、四~五月の現代美術展(MAM)、八月の古典音楽、九月の現代舞踊、十一月の雅楽などの各公演だ。西田所長は「記念年ですから特別に力を入れた」とし、切れ目なく通年開催を実現した。
西田所長が赴任した〇六年三月時点で決定していたのは現代美術展だけ。「私は百周年をやるために赴任した。のこりは全て来てから企画を進めた」と振り返る。例えば、結城座一つで六~七千万円がかかった。
西田所長は「今まではサンパウロ中心だったのを、今回は全伯を巡回した」と違いを強調し、「地方などで初めて日本の優れた文化に触れたブラジル人が多かった。かなり手応えがあった」と成果を語る。この他、助成事業が三十件もあった。
今月帰国する西田所長は「百周年を無事に終えた充実感がある。熊本県人会とも頻繁に行き来し、いろんな話が聞けて良かった。ブラジルのことを忘れることはない」と語った。帰朝後は、定年退職する予定。
新所長の内山さんは「百周年では大きな花火が上がったが、そのままで終わっては寂しい。それを次の百年につなげる筋道を地道に作っていきたい」と抱負を語った。