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■記者の眼■進展少ない日本語教育=「かけ声」だけで予算なし

ニッケイ新聞 2009年3月27日付け

 国際交流基金サンパウロ日本文化センターでは、昨年の交流年事業が充実した。その反面、世界中の日本語教育の拠点機関を三年間のうちに百カ所増やすという政府方針が〇七年年初に発表された件に関しては、実は進展が少なかった。
 というのも、「かけ声」だけは大きかったが政府交付金は削減傾向であり、「特別予算がつかない」というチグハクな状況に陥った。そのため基金内の従来予算を削って寄せ集めた資金を使って、「さくらネットワーク」というプロジェクトを実施しているという。
 結果的に、当初のような日本語教育の新施設を設置していくのではなく、従来からある基金の日本文化センターの機能を強化し、各国の大学などで日本語教育に力を入れている機関を「中核施設」として認定することで、それに代えるという方針に変わった。
 すでに基金の施設を中心に三十九機関が「中核施設」になったが、南米では相変わらずサンパウロのセンターのみ。USPやブラジリア大学、リオ連邦大学の日本語教育機関を認定する方向になっているが、まだ決定ではないという。
 つまり、新方針発表以前と、南米においては実態としては変化がない状況であり、「かけ声だけ」で終わりそうだと危惧される。
 その中でようやく今年十月から日本語教育の専門家派遣が実施されることになったが、これも〇六年三月で打ち切りになっていた制度が復活した形、ともいえる。二年間の任期で、地方の日語学校にも巡回する。
 ただし、TVを通して日本語普及を図る新方針も出されている。すでにNHK国際放送で日曜午後二時から放映されている日本語教育番組「エリンの挑戦・にほんごできます」(全二十五話)をケーブルTVのJBNで五月頃から放送する。
 〇四年に中国政府が打ち出した中国語教育機関「孔子学院」は、〇八年年一月現在、わずか四年で世界に二百校まで一気に広がった。政治的な近視眼に陥り、国内問題ばかりに関心が集まる状況は良くない。
 日本語教育は外交の根幹だといっていい。せっかく日本語教育強化策に特別予算をつけず、かけ声だけで終わらせてはいけない。 (深)