ニッケイ新聞 2009年3月27日付け
「日系人」の地位を三十万円で売るかのような取引きが、日本の与党案で堂々と検討されているというのは、ずいぶんとひどいニュースではないか。コロニア社会面既報だが、デカセギ帰伯支援のふりをして、実は「日系人追い出し」を画策しているようだ。たかが三十万円をもらったら、二度と日系人として日本の土を踏めないのか▼うがった見方をすれば、「三十万円でその地位を売るような人は、二度と日本に日系人として来なくて良い」という解釈もできるが、そんなひねくれた考え方で立法されないだろう▼一連のデカセギ大量帰伯報道で決定的に欠けているのは、大半を占める定住日系人の声だ。「解雇されて帰伯したいが、お金がない」という偏った声ばかり報道されるから、このような〃帰国支援策〃が検討される▼なんの統計的根拠もない個人的な推測だが、三十二万人いたデカセギのうち、昨年十月からの半年で帰伯するのは五~七万人という気がする。もし、日本の景気がさらに悪化すれば十万人もありえる。それでも、全体の三分の一にすぎない。残りは日本に居続けるだろう▼実は、声を潜めて淡々と働き続けている方が多数派であり、共生を真剣に考えるには、その声こそが取り上げられるべきだ。日系人対策で重要なのは、居続けることを選択した人たちへの前向きな支援であって、積極的な「追い出し」ではない▼中でもデカセギ子弟の公教育への取り込みは、一日を争う緊急課題だ。政治家がこれに注力しても日本国内での支持率向上にはつながらない。でも間違いなく後世には評価される。ブラキチ内閣には、そこを期待したい。(深)