サンパウロ市交通=公共交通手段の利用増=人口増加率を上回る伸び=ドーナツ化現象など反映
ニッケイ新聞 2009年4月4日付け
サンパウロ市では、中・上流クラスの車離れが悪いが、所得による通勤通学時間には大差はないなど、〇七年のサンパウロ市の交通事情に関する調査結果が三日付伯字紙に掲載された。
地下鉄公社を中心に一〇年に一度行われる「起点と終点」と呼ばれる調査は、最も詳細な交通事情調査とされ、市街化や交通整備計画の基本的資料にもされる。
同調査によれば、サンパウロ市では一〇年間の人口増加率一六%に対し、外出率が二一・六%増えた。特に、ビリェッテ・ウニコ導入で、大サンパウロ市圏からの通勤通学も含め、地下鉄と都電併用が二七七%、地下鉄と都電にバス併用が二四〇%も増加。公共交通手段単独では、都電利用が三八%、バス利用が二五%増えている。
個人交通手段ではバイク利用三八八%、自転車利用八七%の増加も目に付く。市内走行の車の増加率は一六%だ。
一方、サンパウロ市での外出の目的は、通勤が四四・五%、通学が三四%で、娯楽や買い物のための外出の割合がそれ以前より減少。これは、治安問題やインターネット普及などで、自宅での娯楽や電商取引が増えた事にも起因しているという。
興味深いのは公共交通手段利用に対する考えや動きが収入などにより異なる点で、フォーリャ紙によれば、収入三〇四〇~五七〇〇レアルの人の車利用率は、九七年の三八・八%が四五・八%に増え、地下鉄や都電利用は二六・八%と九七年の三〇・五%より減った。
また、収入五七〇〇レアル以上の人は六七%が車を利用、公共手段利用は一四・八%のみだ。
〇七年の公共交通手段利用率は五五%で、個人交通手段利用率と逆転という流れに合わない数字だが、新規雇用増加などで、収入三〇四〇レアル以下の人の公共手段利用が増えたといえる。
一方エスタード紙は、女性の公共交通手段利用率は男性より高く、女性の方が環境問題などに敏感なことや男女の給与差を反映しているという。
交通渋滞や環境問題は公共交通手段への移行を促す原因の一つだが、期待した程の移行は起きていないと市では分析。調査結果は通勤通学圏の拡大、ドーナツ化も反映していると言うが、企業の郊外誘致なども含め、近郊都市も含めた総合的な開発、交通計画検討の声が高まりそうだ。