ニッケイ新聞 2009年4月8日付け
【リマ7日共同】一九九〇年代にペルーのフジモリ政権下で、軍の対テロ特殊部隊が市民計二十五人を殺害した二つの虐殺事件をめぐり、殺人罪などに問われたフジモリ元大統領(70)の判決公判が七日、リマの最高裁特別刑事法廷で開かれ、同法廷はすべての起訴事実について有罪と認定した。検察側は禁固三十年を求刑しており、量刑は同日中に言い渡される。
両事件はフジモリ政権の人権侵害の象徴例とされ、ペルー史上、元大統領が在任中の人権侵害事件で有罪となったのは初めて。訴追を「政治的な迫害」と反論してきた被告には大きな打撃で、裁判開始後も目指していたとされる政界復帰への道は事実上絶たれた。
裁判は二審制。弁護側は直ちに控訴する方針。
地元メディアは被告に対する厳しい刑を予想。フジモリ被告の支持者らは抗議デモの実施を予告しており、リマには緊張感が広がりつつある。
公判では、当時大統領だった被告に対し、軍特殊部隊「コリーナ部隊」が実行した両事件の虐殺の責任を問えるかが最大の争点となった。
判決は「大統領は軍の最高指揮官であり、個々の軍事作戦上の命令権があった」と指摘。その上で二つの事件について「(側近だった)モンテシノス元国家情報部顧問が立案・調整して被告の承認を経た上で、コリーナ部隊にこれを実行させていた。事後にも被告への報告があった」と認定した。
被告は九二年、新聞記者や企業家が連行されて陸軍情報部の地下で拷問された事件をめぐり、誘拐などの罪でも起訴された。