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発見から一世紀を経て=シャーガス病撲滅はまだ=それでも世界で先行くブラジル

ニッケイ新聞 2009年4月14日付け

 土壁のサッペ小屋にバルベイロ(サシガメとも呼ばれる虫)といえば、シャーガス病を思い浮かべるが、四月十四日は、医師のカルロス・シャーガス氏がシャーガス病の原因を突き止めた日だ。
 十二、十三日付フォーリャ紙によれば、シャーガス氏によるシャーガス病の原因である原虫トリバノソーマの発見は、ミナス州中央部のラッセンセの町でのこと。鉄道車両を改造した診療所でノーベル賞に値するほどの発見をしたのは、一〇〇年前の一九〇九年だ。
 見知らぬ症状に苦しむ二歳の娘を見かねた両親が、診療所を尋ねたことで発見された原虫のことは、二十二日には論文で発表された。
 ノーベル賞は今一歩で逃したが、最初のシャーガス病認定患者である少女が治療後に七二年も生きたことは、同氏にはノーベル賞にも優る勲章だ。「ブラジルがシャーガス病の診断と治療では世界でも一歩抜きん出ていることを誇りに思うだろう」とは、シャーガス氏の孫弟子にあたる医師のジョアン・カルロス・ジアス氏の言葉だ。
 ラテン・アメリカでは登録済み患者が一六〇〇万人いる他、自分が病気に罹っていることを知らない患者も一三〇〇万人いるといわれるシャーガス病。ブラジルでも〇六~〇八年に年二九二人の患者発生を記録している。
 感染後の発症が遅れることも多く、症状も人によって異なるために診断も遅れ易いシャーガス病は、バルベイロのフンに含まれた原虫が、刺し傷を掻いたりして血管に入って感染する。心臓障害や脾臓などの肥大、筋肉痛、脳脊髄炎なども起こすが、感染初期にしか効果がないという薬は副作用も強く、対症療法中心となり易い病気だ。
 原虫が発見されたラッセンセの町は、今も土壁の家が多く、住民の七八%が貧困層に属するが、森林伐採などで媒介となるバルベイロが減り、シャーガス病は肥満や糖尿病、デング熱などに王座を譲っている。
 シャーガス病の予防法はバルベイロ駆除と刺咬防止だが、虫減少後も新たな患者が発生するのは、何十年も前の古い感染が主原因という。発見から一世紀を経ても病気との戦いは続いている。