ニッケイ新聞 2009年4月17日付け
ルーラ大統領は十五日、リオデジャネイロ市で開催されたラテン・アメリカ経済フォーラムで「国際経済は、浸水した客船で一等船客も三等船客も一緒に海の藻くずと消える瞬間にある。国際経済を機能不全にしたのは、保護主義という麻薬だ」と述べたことを十六日付けエスタード紙が報じた。同フォーラムはトリニダード・トバゴで十七日に開催する米州機構首脳会議に向けて、ネオリベラリズムが引き起こした金融危機の修復に一石を投じるための予備会議とされる。
ルーラ大統領は、先のG20サミットで国際会議の議事進行要領を会得したようだ。大統領は人生の半分を新世界秩序の構築に賭け、今は人々がそれを支持している感触を得たという。
「保護主義は麻薬」の信念に立ち、ドーハ・ラウンド(多国間交渉)の再開へ根回しを始める考えを明かした。麻薬は即効で快感をもたらすが、やがて身の破滅を招く。経済発展における国家の役目と銀行の国営化を旗印に、ブラジルは世界に先んじて不況から立ち上がるとたんかを切った。
危機克服に銀行の国営化は不可欠とするルーラ大統領の主張は、IMF(国際通貨基金)の考え方とは明らかに異なっており、その機構改革を意識しているようだ。
中央銀行のメイレーレス総裁が、「ブラジルは経済成長期に危機に遭遇し、成長を続けながら危機から脱出する」と述べた。危機終焉の暁には、ブラジルが最大投資国になっているといいたかったようだ。
同フォーラムの経済発展について、フラーガ前中銀総裁が「危機克服の処方箋は政策金利の引き下げ」と反駁した。健全財政のための政府経費削減は、いくら叫んでも実行の可能性は少ない。ならば残された道は、金利引き下げしかないと。
ブラジルの状況は、先進諸国とは反対。先進諸国の政策金利は殆どゼロに近く、あとは財政収支で調整するしかない。ブラジルは財政黒字を引き下げるらしいが、それより新たな政府浪費をカットするほうが容易で現実的だと提言した。
政策金利を引き下げ、政府経費に占める公債の支払い金利の割合を減らし、政府経費を一%減らせれば、二〇一〇年のGDP(国内総生産)は、四%を達成できると前総裁は見ている。