ニッケイ新聞 2009年5月7日付け
中央銀行は五日、金融危機が始まって以来初めての為替介入を行い、レアル通貨の過大評価とドルの下落防止に努めたと六日付けフォーリャ紙が報じた。八カ月にわたって上がり続けたドル通貨が、ここ数週間レアル高の流れに変わり、投資家らによるバブルの形成が懸念されたからだ。しかし、中銀は五日にスワップ取引で三十四億ドルを調達したが、六月に満期となる国債の配当支払いであって、為替介入ではないと市場の推測を否定している。
中銀はドル高維持のための為替介入を否定したが、中途半端な取引ではなかった。財務省はドル高レアル安が金融危機の克服に好都合であるとして、為替介入に圧力をかけた。
中銀は昨年九月からこれまで、ドルを売りレアル通貨の価格維持に努めた。それが急転直下、ドルの価格維持に回った。中銀は投資家によるバブル形成の魂胆を読み、人為操作による市場撹乱を阻止したと洩らした。
中銀の介入には、伏線があった。バブル形成の阻止は表向きで、財務省の圧力があったようだ。輸出の落ち込みが財政収支の課題となっている現在、レアル安が必要。ほっておけばドル安にながれる市場の動きに釘を刺したかっこうだ。
金融危機による怪我の功名は、ドル高であった。輸出品の生産コストが割安になり、国際競争力にも有利に働く。
中銀による五日の為替介入は、政府の経済政策よりも実務的効果が大きいと金融市場から歓迎された。四月の急激で同時に起きた外貨流入は、為替バブルを形成するにはおあつらえむきの条件であった。仕出筋が出鼻を挫かれたのではないか。
これまでの経済は、高金利とレアル高で財政操作を行い、国外での資金調達を容易にした。また国外で低利資金を調達、金融市場で運用し不労所得を得た。しかし、国内産業は疲弊した。
中銀が政策金利を一%下げたにも関わらず、市場のレアル高への動きが収まらないことから、今回の大規模な為替介入が行われた模様だ。
政府としてはレアル高・高金利からレアル安・低金利へと大きく時代の舵を切ろうとしているようだ。