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サンパウロ州で副読本回収騒ぎ=成人向け内容が小3向けに?=野卑な言葉や性的描写も

ニッケイ新聞 2009年5月21日付け

 三月に州立校に配布された教科書に印刷ミスがあったとして、回収作業を行ったサンパウロ州教育局が、今度は成人向けの本を小学校三年生向けとして一部の学校に配布するという失態を繰り返した。
 十九日付フォーリャ紙で、野卑な言葉(パラヴロン)や性的表現が含まれた副読本と報じられた書籍がそれで、二十日付伯字紙は、犯罪組織PCC(首都第一コマンド)に言及する絵も含まれていると報道。サンパウロ州教育局担当者への批判の調子も一層強くなっている。
 この副読本は、サンパウロ州教育局が選択した八一八の書籍の一つで、州政府は一七〇〇冊を購入。この内一二一六冊が州立校に配布されたが、実際に本を手にした関係者が次々に苦情を寄せ、回収作業も既に始められた。
 サンパウロ州教育局は報道機関への会見も行っていない上、十八日公表の文書でも、小学三年生向け副読本として同書籍は不適切で、早急に回収作業を行うと言及したのみだ。
 これら八一八の書籍はは、セーラサンパウロ州知事が提唱する「読んで書こう」キャンペーンの一環として配布されたもの。
 サンパウロ市長時代から文盲撲滅のためのキャンペーンを繰り広げてきたセーラ聖知事にとり、主要政策の汚点ともなる副読本配布で、知事自身、「三月に指摘された教科書の南米地図印刷ミスより重大なミス」と明言した。
 同知事は、州政府として選択者など、責任の所在を明らかにし処分するとも言及したが、回収された本の著者は、「あの本は成人・青年向けで、子供用に配布すべきものではない」とも。
 家庭での躾と学校での教育という基本的な線が崩れがちなブラジルだが、九歳前後の子供達が、書籍に記載された野卑な言葉や性的表現に加え、犯罪組織の存在を肯定するかに見える絵を見た時、どんな思いや考えが形成されるかと考えると、それらの影響は計り知れない。
 幸い、配布を受けた学校が生徒向けに公開する前に回収され、問題の本を手にした子供はいないようだが、教育関係者の配慮や思慮の不足が及ぼす影響を考える時、書籍選択には、政府と現場の連携を密にし、年齢や実情に即したものを慎重にと願わされる。