ニッケイ新聞 2009年5月23日付け
黄熱病の感染傾向に変化が見られ、保健省が獣医や生物学者による原因解析調査を開始した。
二十一日付エスタード紙によると、保健省の処置は、北伯、北東伯の一部、中西伯を中心に発生し、流行は七年毎だった黄熱病が、従来は安全とされていた地域にも拡大し、流行間隔も短縮という変化を受けたものだ。
最近の流行は〇七年十二月~〇八年三月で、〇八年四月四日には保健省が、ゴイアス州や連邦直轄区などで、死者二一人を含む四〇人の真性患者発生と報告。死者数は〇三年の二三人に次ぎ、従来の周期より短い五年目の流行に、保健省の対応の遅れも指摘された。
ところが、黄熱病の感染拡大は、感染域拡大としても表出。それが〇八年十一月~今年四月に確認されたサンパウロ州南西部と南大河州での感染報告だ。
従来は感染の危険は無いとされていた地域での感染報告は、両州で死者一六人を含む四三件。
開始されたばかりの原因解明調査では、今後の感染拡大傾向なども占うため、媒介蚊の発生源が増えているか、黄熱病の病原体を持つ猿の生態系に変化は無いか、あるとしたらその原因は何かなど、鍵となる調査項目を挙げているが、調査員達が念頭に置いている事の第一は気候変化だ。
地球温暖化の結果として大水や旱魃、マラリア流行などを警告する説もあるが、保健省でも、森林伐採による気温上昇と生息域を失った猿の移動、農業形態や地球規模の気温変化、ダム建設工事などの影響も調べる。
例えば、死者も七人出ている南大河州の気温は平年気温を上回り、蚊が発生し易かった上、患者発生地域は貯水池にも近いという。〇七―〇八年の流行地域では、ダム建設などで猿の生息域が人の生息域に近づき、水辺での蚊の発生も増えた事で患者も拡大したとの指摘もあったことを考えると、感染拡大は人間が招いたとも言えそうだ。
同紙には、マラリアの媒介となる蚊が、池などの自然水域だけでなく、タイヤや空き瓶、水のカイシャなどにも卵を産み始めたとの記事も掲載。蚊が媒介する感染症の新流行を防ぐには、水周りに気をつけ蚊の産卵場所を無くす、予防接種を受けるなど、自衛、啓蒙活動が必須だ。