ニッケイ新聞 2009年5月26日付け
IPEA(応用経済研究所)のマルシオ・ポッチマン所長は二十四日、金融危機による影響で過去六カ月、企業が低額給与の従業員への人員交代を加速していると発表したことを二十五日付けエスタード紙が報じた。IPEAが〇八年十月から〇九年三月に行なった調査によれば、正規雇用での従業員交代は毎月平均でそれ以前の三・七%から三・九%へ増え、民間企業全体では、二千九百四十万人の従業員の二三・四%が人員交代の対象とされたという。それは四人に一人の割合だ。
経済混乱に乗じた企業は解雇ばかりでなく、より低額の従業員との交代も行ない、人件費の削減を図った。これは六カ月間に労働者の四人に一人が転職したことになる。
雇用前線には新規参入者や失業者が待機しているので、給与水準を不満とする退職者の後には、薄給の就職希望者が待っている。交代劇は、これまでになかった速さで進行中。解雇も求人も容易で抵抗が少ない。
従業員の生活の安定を奪い社会不安につながる人員交代の実態は、金融危機でより悪化とIPEA所長はいう。〇八年九月までは高給取り一人の解雇で複数の採用が可能であったが、それが出来なくなったからだ。
企業は、これを機会に生産と労働の調整に励んでいる。そのため失業保険の支給が増え、国庫負担も増えた。より低い給与水準で元の職場復帰というのも多い。
従業員更新率の高い部門が、解雇が多い訳ではない。商業部門やサービス部門などの第三部門は、更新率が高くても常に前期比で雇用が解雇を上回っている。商業部門の更新率は、同六カ月間にそれ以前の四・〇二%から当期は四・〇八%へ上昇した。
労組の話では、商業部門では金融危機以前から従業員の交代が多く、出入りは激しかったという。そのため、商店の入り口で求人の看板がなくなったことがない。商業部門には、信じられないようなことが日常茶飯事的に起きるようだ。
サンパウロ市スーパーで月給八百レアルをもらっていたオリベイラさん(二五)は、二年前に解雇され、未明のベーカリーで同額で就労後、スーパーのレジへ六百レアルで雇われた。月給が二百レアル減った上、保健プランと食事チケットを失い、妻にまで逃げられた。