ニッケイ新聞 2009年5月27日付け
新連載『日系社会とは何か』は正直言って、分不相応な重いテーマだと痛感する。だが百一年という今を差し置いて、このような課題を問い直す機会はもう来ないのではないか、そんな切迫感から無理やり取り組んだ▼昨年の百周年で日本移民の歴史や日本文化が再三、ブラジルメディアでかつてない量と質をもって扱われ、ブラジル社会全体において日本文化や日系人であることの価値が、かつてないほど高まった▼今であれば、コロニアの中核をになってきた一世や準二世、帰伯二世も残っている。さらに、二世や三世側からの日本文化や自分のルーツに関する興味も生まれつつあり、ブラジル社会からの敬意、関心が最大に高まっている。こんな機会は、歴史的に見てもう永遠に訪れない▼このまま放っておけば日本文化への熱は下がるばかりだし、若い世代はどんどん離れていくだけだ。今をおいて日系社会の基盤強化、日系人のアイデンティティ強化策を打ち出す機会は永遠に訪れない。次の百年、二百年に向けて、最初で最後の機会が今だという認識が必要だ▼日本の歴史においても海外のコミュニティが独自に現地社会に対して文化普及をこれだけの規模ですることは初めてといっていい。百一年目の今年は、ブラジルの日系社会にとっても日本にとっても重要な分岐点であり、今までと同じ一年にしてはもったいない。世界の日系社会の模範となるような取り組みがあってもいい▼では、どんな補強をしたらいいのか。それを考えるためには日系社会をより深く、より広く理解する必要がある。その一助になればと、こけの一念でなんとか書き進めたい。 (深)