ニッケイ新聞 2009年6月2日付け
【リオデジャネイロ共同】浜松市で起きた強盗殺人事件をめぐり、二審のブラジル・ミナスジェライス州高裁で強盗殺人などの罪で禁固三十四年五月の実刑判決を受け、上告手続きを進めていた日系ブラジル人の被告(37)に対し、審理を担当する同州高裁は五月二十九日までに上告を受理しないことを決めた。州司法当局者が明らかにした。
州高裁は上告理由がないと判断した。弁護側は連邦最高裁に対し、直接不服を申し立てる意向とされる。学識経験者らによると、上告自体が退けられた状況で不服申し立てが受け入れられるケースはほとんどなく、刑がこのまま確定する可能性も出てきた。
二十一日付の州高裁の決定によると、被告は二〇〇五年十一月、浜松市のレストラン経営者=当時(57)=を絞殺して売上金約四万円を奪い、直後に出国した。
弁護側は一月に上告手続きを始め、日本での嘱託尋問や調書の作成が弁護人などの立ち会いの下で行われておらず、ブラジルの刑事訴訟法上、違法であるなどと訴えていたが、決定は「嘱託尋問は判例もあり手続き的に合法」として弁護側の主張を全面的に退けた。
レストラン経営者の妻は、代理人の弁護士を通じて「肩の荷が降りたような気がしますが、遺族にとってはこれからがつらく悲しい道のり。家族は事件直後と変わらない気持ちで毎日を過ごしています」とコメントし、被告に対して「遺族の気持ちを少しでも分かってほしい。判決通り服役を続けていくことを見届けたい」と心境を語った。
一連の裁判は、日本政府の国外犯処罰(代理処罰)要請に基づいてブラジルで行われた。二〇〇七年十二月に一審の同州地裁は禁固三十四年五月の判決を言い渡したが、被告側が控訴。昨年十一月に州高裁が控訴を棄却したため、被告は上告手続きを進めていた。