ニッケイ新聞 2009年6月2日付け
韓国の前大統領・盧武鉉氏が自宅がある金海市近郊の烽下村の山を散策中に崖から転落し死亡した。「多くの人に迷惑をかけた」「火葬にしてくれ」の遺書もあり当局は自殺としている。大統領在任中の金銭疑惑を検察に追求されていたのを苦にして自ら命を絶った自裁であろうが、金大中氏に次ぐ革新政権を率いた盧氏も悲劇の最期であった▼苦学して弁護士になり政界に躍り出て軍事政権と真っ向から対立し、金正日総書記と会談するなど北朝鮮に近く、06年のミサイル発射や核実験にも制裁を拒否する「真っ直ぐな人」。靖国神社に参拝する小泉純一郎元首相に反発し、日韓関係も断絶?の苦い想い出もある。そんな「真面目な人物」でも、韓国の伝統ともされる金銭への杜撰さに巻き込まれたのはやはり寂しい▼それにしても、韓国歴代の大統領には亡命や投獄、暗殺と悲劇が多い。初代の李承晩は、60年の4月革命で政権を追われハワイに亡命し故国にも帰れずに死を迎えている。軍人から政界に転じた全斗煥、盧泰愚両大統領が不正事件に関与したと告発され投獄されたし、金泳三、金大中両氏の息子は不正な金銭の授受で服役している▼尤も惜しまれるのは、漢江の奇跡を成し遂げ日韓条約を結んだ朴正煕大統領の暗殺であろう。妻の陸英修夫人も日本在住の韓国籍の左翼青年に銃撃され殺されており、このご夫婦は真に不幸な生涯である。朴大統領は旧陸軍士官学校で学び、韓国繁栄の礎を築いた人物だけにあの死は余りにも早すぎた。そして盧氏の自殺と韓国政界の暗は続く。(遯)