ニッケイ新聞 2009年6月13日付け
中央銀行の通貨委員会(Copom)は十日、市場の予測を上回り、政策金利を一挙に九・二五%へ引き下げることを決定と十一日付けエスタード紙が報じた。四回連続の切り下げで、一九八六年に政策金利が設定されて以来、初めての一桁金利となった。
中銀は、これからのブラジル経済が、爪に火を灯すような金銭感覚の時代になると見ている。今のところ〇九年のインフレは目標の四・五%内にあり、一〇年も四・五%内に抑制できる見通しだとの判断を受けての金利決定であった。
二期連続の四半期マイナス成長となったが、中銀のメイレ―レス総裁は「ブラジルにとって不況は過去のもの」であると声明を発表した。
一桁台金利は、ブラジルにとって初めての経験。政策金利は国債にとって、目の上のたんこぶであった。ルーラ大統領は「一桁台金利がブラジルの夢」といっていたが、それが実現した。
一桁金利時代の到来だが、政府高官は一桁の御し方を知らない。先ず物価スライド制契約や新たな金利引き下げなどが、未知の経験だ。
サンパウロ総合大学(USP)のマルシオ・ナカネ教授は「経済が回復期にあるときは金利引き下げは続かない。しかし、もっと注意すべきことは、実質金利が五%に近いこと。そうなると経済は、スライド(指標に応じて価格を自動的に改訂すること)制を強化する」という。
さらに前もって取り決める配当や金利、報酬契約が行われる。例えばポウパンサ(貯蓄投資)や住宅ローン、FGTS(勤務年限保証金)の支払金などが、それに該当する。そうなると政策金利の連続引き下げは、契約の支障になる。
ポウパンサや投資ファンドの配当に関する政府決定は、実質的に何も解決していないので、単なる一時しのぎの詭弁になると同教授は見ている。
中銀の通貨政策は国債をベースに決めるので、本来の通貨政策でも金利政策でもないとも批判した。