ニッケイ新聞 2009年6月16日付け
フランス航空の墜落事故には謎が多い。何故?墜落したのかの原因もまだ不明だし、飛行中の情況を記録したブ・ボックスも見つかっていない。それでも、49遺体と尾翼などが発見されているが、海の深さや現場の情況からしても、多くの乗客遺体の収容は難しい。あまりの情報不足に遺族らは苛立っているけれども、日本の例を見ても、こうした事故には誤報やミス情報が多い▼日本で最大の誤報(というよりも捏造)は「伊藤律会見記」とされるが、1952年の「もく星号」墜落のときも朝日新聞が4月9日の夕刊で「日航機海上に不時着」「乗組全員救助さる」のトップ記事で報道した。これはまったくの誤報であり、「もく星号」は三原山に衝突し墜落、乗客ら37人全員が死亡している。これもニュースを何処から入手したのかなどミステリーもある▼当時、日本航空史上最悪とされた事故だったが、あの頃に飛行機で旅行する人はほんとうに少ない。「もく星号」は羽田空港から福岡に向かったのだが、八幡製鉄社長の三木隆や石川島重工の重役などと漫談家の人気者・大辻司郎らも乗っていた。ところが、長崎民友という新聞が4月10日朝刊で新聞史上に残る大いなる捏造記事を報じた▼「危うく助かった大辻司郎」の写真を掲載、さらに大辻夫人の「笑いの種ですワ」の談話まで掲載したのである。これも朝日新聞などの「全員生存」の誤報を信じ、大辻本人は既に死亡しているのに「大辻談話」となったのだが、今となっても笑うに笑えぬ話としてマスコミの語り種になっている。 (遯)